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2009.07.30

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読解力を伸ばす6つのコツ

経済紙やビジネス文書を正確かつスピーディーに読みこなすために

2009年7月30日(木)15時08分
井口景子(東京)、カレン・スプリンゲン(シカゴ)

 次々に届く英文メール、膨大なページ数の英文契約書、始業前のチェックが欠かせない各国経済紙のサイト──。仕事に必要な情報を効率よく読みこなす力は、リスニングやスピーキングと同じくらいビジネスシーンに不可欠だ。

 大量の英文をスピーディーに、しかも正確に理解するには? 文字情報を処理する際の脳のメカニズムに即した読解のコツや効率的な学習法を探った。

日本語に訳すのを恐れるな

 母語に訳しながら読む方法は、受験英語の代名詞として悪者扱いされがち。しかし専門家の間では、手もちの知識を有効に活用するストラテジーの一つとして、むしろ評価されている。

 「確かに読むスピードは遅くなるが、よほど高度な語学力のある人か、よほど平易なものを読む場合を除けば、頭の中でなんの翻訳行為もしないのは非現実的だ」と、米ブリガム・ヤング大学のニール・アンダーソン教授(応用言語学)は言う。

 とくにビジネス関連の専門用語は日本語に置き換えたほうが、その概念に関して自分がもっている幅広い知識が脳内で活性化されやすく、理解の助けになるという。

 ただし、複雑な構造の英文を後ろから前に向かって戻りながら訳す全文和訳の癖は直すべきだ。文を意味や構造の切れ目に沿って数語ずつの塊に区切り、一つの塊を理解したうえで次に進む習慣をつければ、英語のまま概念を理解できる部分が徐々に増えてくる。

飛ばし読みをしない

 ポイントだけを素早く把握するため飛ばし読みをしようとして、かえって意味がわからなくなった経験がある? 飛ばし読みは意識的に行うものというより、英文を理解する際の脳の処理効率がアップした副産物として結果的に可能になるものだ。

 関西学院大学の門田修平教授(心理言語学)によれば、かつては1分間に300語程度読める上級者やネイティブは、最小限の単語以外は見ることなく、意味を予測しながら飛ばし読みしているとされてきた。だが眼球運動の研究によって、彼らもほぼすべての語を知覚し、その情報を処理しているとわかった。

 それでもスピーディーに読めるのは、単語を知覚し、心の中の辞書にアクセスして意味を理解する、文法構造を解析するといった読解の基本処理が自動化されているためだ。

 自動化を促すには、すらすら読める平易な英文の多読が役立つと、門田は言う。専門分野の超入門書から気楽なエッセーまで題材は何でもいい。「目からインプットを浴び続けることで一種の留学効果を得られる」

推論頼みの甘いワナ

 意味がわからない個所を前後の文脈から推測するスキルは、正しい解釈にたどり着く重要な手がかり。金融や法律など自分の専門分野にかかわる文書や、日本語で見聞きしたニュースに関連する記事のように背景知識が多いときほど、正しい推論ができる確率も高まる。

 もっとも、推論に頼りすぎるのは危険だ。「英語力の低い人ほど文脈に頼って推測し、しかもまちがえる。当初の仮説を修正するための『手がかり』を見逃すからだ」と、門田は言う。

 そんな人はまず、語彙や文法の基礎力をアップさせるのが先。文中の単語の95%以上を知らなければ、未知語の意味を正しく予測できないという研究もある。

単語の数より大切なもの

 新聞や小説の内容を大筋で正しく理解するには、少なくとも5000〜6000語の知識が必要だ。さらにビジネス文書には専門用語や業界特有の意味で使われる表現も多いため、業界別の用語集などで知識を補完する努力も必要になる。

 ただし一定数以上の語彙を覚えたら、その後は頻出語の使われ方を深く学ぶほうが効率がいい。語彙力と読解力の関係を調べた実験では、知っている単語の「数」以上に、語についての知識の「深さ」が読解力と強い相関関係にあった。どんな語や句とセットになりやすいか、どんなニュアンスをもつかなど総合的な知識を身につけよう。

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