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中国の真実
60周年を迎える巨大国家の
変わりゆく実像
内需を蝕む中国の医療クライシス
医療費負担が大きい国民はタンス貯金で自己防衛。成長を続けるには医療保険など社会保障制度の整備が急務
中国が改革・開放へと大きく舵を切った78年12月の党中央委員会総会から30年。未曾有の経済危機に見舞われている今の党・政府の指導部に祝賀ムードはない。
なにしろ現実は厳しい。過去の高度成長をもたらした輸出主導の経済成長モデルが限界に来たことは、もはや火を見るよりも明らかだ。08年11月の輸出額は前年同月比で2・2%減少し、01年6月以来初めてマイナスを記録。07年には12%近くあったGDP(国内総生産)の成長率も、今年は8%まで落ち込む見込みだ。
では、どうすれば中国経済の成長を維持できるのか。この点ではエコノミストの答えも党指導部の考えも一致している。「内需の拡大」である。つまり、国民にもっと金を使わせることだ。
だが、これが意外とむずかしい。中国の社会保障制度は破綻しており、とくに医療制度は穴だらけだ。重い病気になれば、蓄えはあっという間に消える。だから庶民は収入の多くをタンスにしまっておく。こんな状況が続くかぎり消費は増えない。
消費に回す金がないのではない。中国人の貯蓄率は25%を上回り、総額では3兆ドルに達している。GDP比では約16%となり、世界銀行の試算によると、どのOECD(経済協力開発機構)加盟国よりも多い。
これだけの現金があれば、計算上は簡単に輸出の減少を補える。「国内市場は大きく、貯蓄率は高く、貯金はたくさんある」。中国商務省の易小準(イー・シアオチュン)副大臣は先ごろ、そう豪語したものだ。
経済への不安を取り除こうと、政府は08年11月、総額5860億ドルの景気刺激策を決定した。だがその重点は公共事業におかれている。政府機関の国家発展改革委員会(NDRC)によれば、予算の約45%は新たな鉄道や発電所の建設にあてられる予定。医療や文化・教育分野に使われるのは、わずか1%にすぎない。
こんな対策では変化を期待できないとする専門家の声は増える一方だ。「社会保障を早急に整備することこそ、政府のためになる。(中国人が)貯金に熱心なのは病気になったときを恐れるからだ」と言うのは、長江商学院(北京)の黄明(ホアン・ミン)教授だ。