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パックンの風刺画コラム Superpower Satire (USA)
トランプ提唱のお下劣「移民ファイトクラブ」に矛盾あり【風刺画で読むアメリカ】
©2024 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION
<風刺画を米芸人パックンが読み解くコラム。トランプ前大統領がキリスト系団体の集会で提案したのは、移民同士を戦わせる格闘技大会。そもそもキリスト様も「移民」なのに...>
ドナルド・トランプは肩書コレクター。大統領のほか、不動産王、リアリティー番組のスター、性加害者、詐欺師、犯罪者などさまざまな経歴・前歴を持つが、プロレスのプロデューサーっぽいことをしていた過去もある。
その経験からか、最近ひらめきがあったようだ。とてもユニークな格闘技リーグを新設したいのだという。その名もMigrant Fight League(移民格闘リーグ)。リング上で移民同士が戦い、最後に勝ち残った選手が従来の格闘技王者と対決する。こんな細かなシナリオを、最近トランプは集会で発表した。政策の詳細は発表していないのに。ちなみにMigrantは季節労働者などを指す単語だが、保守派はよく移民という意味で使う。
トランプは昔から移民を「麻薬売人」「レイプ犯」「犯罪者」と呼び、最近だと「獣」「人間じゃない」とさらにさげすんでいる。全人口の14%が移民のアメリカで、そんな大勢を人格否定することはかなり大胆な暴言に思われる。しかしXenophobic(外国人嫌い)な観衆はこういうレトリックに熱狂する。
今回も例外ではない。格闘大会の案を発表した場はFaith and Freedom Coalition(信仰と自由連盟)というキリスト教系政治団体が6月に開いた集会。この団体は主要な価値観として「信仰、勤勉、結婚、家族、自己責任、弱者救済」を掲げている。移民同士の決闘はそのどれに当たるのか想像がつかないが、トランプの企画に客席は沸いた。
移民は国民の平均より信仰心があつく、よく働く。家族関係も安定している場合が多い。つまり移民こそがこの団体の価値観を体現しているように思われる。そうでなくても社会的弱者である移民は団体に笑われるのではなく、救われる対象のはず。
そもそもキリスト様も移民。聖書によるとその生誕直後、ユダヤ国の王がキリスト様の命を狙っていると天使から知らされ、キリスト一家はエジプトやガリラヤで難民生活を余儀なくされた。
その時、トランプが避難先にいなくてよかったね。あるいは今のアメリカへ命からがら逃げようとしたら、トランプ好きなキリスト教徒は皮肉にもキリスト様本人を迫害しただろうね。 まあ、格闘技が強かったら話は違うかもしれないけど。キリスト選手の得意技はなんだろう? 「十字固め」かもね。
ポイント
THE FIRST RULE OF MIGRANT FIGHT CLUB: DO NOT TALK ABOUT THE MIGRANT FIGHT CLUB!
移民ファイト・クラブのルールその1。移民ファイト・クラブについて口外しないこと!(映画『ファイト・クラブ』のセリフのもじり)
UNLESS YOU'RE GINNING UP YOUR FOLLOWERS WITH XENOPHOBIC HATE SPEECH!
ただし自分のファンを外国人嫌悪のヘイトスピーチで盛り上げたい場合は除く!(持っているのはファイト・クラブに登場するせっけん)