コラム

タリバンが撤退米軍の最新鋭兵器を入手...でもアメリカには無問題(パックン)

2021年09月01日(水)09時05分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)
タリバン(風刺画)

©2021 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<アフガニスタンから米軍が撤退する際に残していった最新鋭の兵器がタリバンの手に渡ったが、思われているほどの惨事でない理由とは>

アメリカ史上「最長の戦争」が醜い終末を見せている。米軍がバイデン大統領の命令の下で性急に撤退したことによって、アフガニスタン政府軍は姿を消し、政府は崩壊、首都カブールは陥落してしまった。

同時に、軍の銃、大砲、飛行機などがタリバンの手に渡った。戦闘で活躍したヘリコプター「ブラックホーク」や、夜中に鍵を落としたときに役に立つ暗視装置「ナイトビジョンゴーグル」もだ。

つまり、アメリカのおかげで、「中古車の荷台にマシンガン姿」でおなじみの反政府勢力タリバンが一気に最先端の軍備を手に入れることに成功した。この増強が風刺画ではステロイド注射として表現されている。しかし、希望を捨ててはいけない! 実は思われているほどの大惨事ではないのだ!

まず、装備が入手できても、そこまでの兵力増強になるわけではないと、専門家は言う。複雑な機械の操作には訓練と整備が欠かせない。「皮肉にも、僕らの装備はすぐ壊れることが救いになるかもしれない」と、米軍関係者は語る。アメリカの軍需産業の品質管理がぞんざいでよかった!

実は、戦争の終結がこんな醜態を見せるのは初めてではない。今回の悲劇は1975年のベトナム戦争の終幕を彷彿させる。

民間人を残しながら米政府関係者が逃げた点も「サイゴン陥落」にそっくり。大量の米軍装備が敵の手に渡ったのも同じ。北ベトナム軍が入手したものの合計は当時の価格で10億ドル以上だったという。現在の価値で50億ドル以上!

一方、今回タリバンに残されたものは100億ドルに上る可能性があるそうだ。だが、戦争が始まってからここまでの経費は計2兆ドル以上にも上った。計算すると、1日約3億ドルを20年間毎日費やしている。だから、その中の100億ドルは、平均経費の1カ月分にすぎない。逆に安上がりだ!

もう一つ安心材料がある。北軍に統一されたベトナムはその後、大きな脅威に発展しなかった。終戦から20年でアメリカと国交を正常化し、経済関係も深めた。そして今やアメリカの戦略的パートナーになりそうな接近ぶりを見せている。

つまり、45年後のアメリカ・アフガニスタン関係も楽しみだ。その時バイデンさんを褒めようね。123歳のはずだが。

まとめると、希望の源はこの3点:アメリカのモノはすぐ壊れるからよかった! 最初から大金を費やしているから、損失額が気にならない! 半世紀後に祝杯を挙げよう!

あ~、バカな戦争の予防接種が欲しい。

ポイント

THE UNINTENTIONAL BOOSTER SHOT...
意図せざるブースター接種...

STEROIDS
ステロイド

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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