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パックンの風刺画コラム Superpower Satire (USA)
議会襲撃でわかった、アメリカはもはや「こんな国」(パックン)
A Belated Awakening / (c)2021 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION
<トランプの嘘や陰謀論を信じ込み、現実にあらがい暴力に走る――こんな醜い光景にも人々はもう驚かない>
This is not who we are! (こんなのわれわれの国じゃない!)。アメリカでは国民の自己認識にそぐわない事態に対して、よくこんな声が聞かれる。
Birtherism=「バラク・オバマはケニア出身!」という荒唐無稽な陰謀説をトランプ前大統領が広めたときにも聞こえた。
バージニア州のCharlottesville(シャーロッツビル)で白人至上主義者のデモに抗議する群衆に車が突っ込んで女性がひき殺され、トランプが白人至上主義者をかばったときも聞こえた。
不法移民として保護者から引き離され収容されているChildren in Cages(檻に入った子供たち)が何千人もいると報じられたときもその声は聞こえた。裁判所の中止命令にかかわらず当局が引き離しをやめず、昨年11月時点で700人近くの子供が親元に戻っていないと分かったときもだ。確かに、わが国が連続児童監禁事件の犯人だなんて思いたくない!
テキサス州エルパソ市の小売り大手ウォルマートの店舗で、陰謀説を信じ込んだとみられる白人男性がメキシコ人を標的に自動小銃で23人を射殺したEl Paso Massacre(エルパソの大虐殺)のときにも、その声は聞こえた。
ミネソタ州ミネアポリスの警察官が丸腰の黒人George Floyd(ジョージ・フロイド)を地面に倒し、首の上を膝で押さえ付けたときもそうだった。フロイドが「息ができない」と20回以上訴えた後「子供に愛していると伝えて」と言って息絶えても約8分もの間、首を押さえ続けた映像が出回ると、「こんなのわれわれの国じゃない!」の大合唱が起きた。
そして、トランプ支持者が首都ワシントンの警察官1人を撲殺したほか60人を負傷させた上、「副大統領に死を」と叫びながら連邦議会議事堂を占領したときにも、反発の声は多く聞こえた。
でも風刺画にあるとおり、もうこんな醜い光景にも驚かない人も多い。一連の事件を見て分かるはず。トランプの嘘や陰謀説を信じ込む人の国である。現実にあらがい暴力に走る人の国である。当局も権力者も不法に力を振るう国でもある。ここまでくれば、Who am I kidding?!(もうばかなことは言ってられない?!)──われわれはこんな国だと、諦めたくなる。
【ポイント】
BIRTHERISM
オバマ元大統領の出生(birth)に関する陰謀論の総称。一部の保守派が根強く主張しているが、具体的な根拠はない。
INSURRECTION
暴動、反乱のこと。昨今のニュースでは今年1月の連邦議会議事堂への襲撃事件を指す事が多い。
<本誌2021年2月9日号掲載>
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