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パックンの風刺画コラム Superpower Satire (USA)
アメリカの悪質な選挙区割りにゴーサイン(パックン)
A Green Light to Gerrymandering / (c) 2019 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION
<米議会下院の選挙区割りは、共和党に有利になるように恣意的に変更されている>
質問は2つ。民主主義はどういう制度? そして、アメリカは民主主義国家? 1問目で「国民1人1票で政府を決めるシステム」と答えたなら、2問目は無視してください。必然的にノーになるから。
まず大統領を決める選挙人制度をみてみよう。大統領選挙では、州ごとの選挙で各州の選挙人票を勝者総取りする。おかげで、ジョージ・W・ブッシュ大統領もドナルド・トランプ大統領も得票率で負けながら大統領になった。最後に共和党候補が得票率で勝って大統領になったのは1988年のパパ・ブッシュ。エリザベス英女王がまだぴちぴちの62歳のときだよ!
次は上院議員選挙。各州は議員が2人いるが、ワイオミング州とカリフォルニア州の人口は68倍も違う。つまり、ワイオミングでは1人68票持っているようなもの。田舎の票が重いから、18年の上院選では共和党が全米で1200万票差で劣勢だったのに、議席を2つ増やした。「負けるが勝ち」ってこれ?
最後は下院だ。風刺画が取り上げるのは gerrymandering(ゲリマンダリング)。恣意的な区割りで野党の票を集中させたり拡散したりして、選挙結果を変える作戦だ。例えば与党、野党の支持者が半々の30人を5人ずつ、6つの選挙区に分けるとしよう。普通なら与党は3区では「3-2」で勝ち、他の3区では「2-3」で負けるはず。だが1つの選挙区に野党支持者5人をまとめ、残りの10人を5区に割り振れば3-2、3-2、3-2、3-2、3-2、0-5で、与党が5区、野党が1区を勝ち取る結果になる。実際に18年のノースカロライナ州の下院選では共和党が5割の得票で約8割の議席を獲得した。区割りのおかげで。
民主主義国で許されるはずはないが、アメリカはもう民主主義国家ではない。悪質な区割りをめぐる裁判で米最高裁判所(Supreme Court)は6月下旬、選挙区を決めるのは裁判所ではなく議会だと、現状の合憲性を認めた。結局、大統領選挙の選挙人制度も、上院の「1人68票」制度も、下院の区割り制度も、憲法を変えないと変わらない。しかし偏った制度で選ばれた人は、偏った制度を守るように偏るだろう。司法手続きを取っても結局、偏った大統領に指名され、偏った上院で承認された、偏った最高裁が判決を下すのだ。無力さにむかつく!
一番むかつくのはどの偏り方も共和党に有利なところ。民主党だったら気にならないかもしれない。僕も偏っているから。
【ポイント】
LOOKS FINE TO ME!
私はいいと思う!
GERRYMANDERED STATES OF AMERICA
アメリカ・ゲリマンダー国(United States of America/アメリカ合衆国にかけている)
DEATH TO DEMOCRACY
民主主義の死
<本誌2019年7月23日号掲載>
※7月23日号(7月17日発売)は、「日本人が知るべきMMT」特集。世界が熱狂し、日本をモデルとする現代貨幣理論(MMT)。景気刺激のためどれだけ借金しても「通貨を発行できる国家は破綻しない」は本当か。世界経済の先行きが不安視されるなかで、景気を冷やしかねない消費増税を10月に控えた日本で今、注目の高まるMMTを徹底解説します。