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パックンの風刺画コラム Superpower Satire (USA)
トランプvs下院議長、政府閉鎖でアメリカは大混乱(パックン)
Shutdown Turmoil / (c) 2019 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION
<年末から政府機関の一部が停止する「政府閉鎖」に陥ったアメリカ。一部の職員には給与が支払われず、ゴミの回収も滞る事態は、いくらトランプでも自慢できない>
米大統領の一般教書演説を指すのが The State of the Union だが、直訳すると「合衆国の現状」になる。毎年1月に議会両院の議員を前にして行われるこの演説が今年は延期された。原因は、昨年末から続いていた record government shutdown(史上最長の政府閉鎖)とその中で過熱した大統領と下院議長との対立。
まずナンシー・ペロシ下院議長が警備の心配を口実に、政府閉鎖中は大統領を議会にお招きするなんてできないと、招待を撤回した。報復として大統領は、政府閉鎖が解消されるまで軍用機は使えないと通告し、ペロシの外国訪問を中止させた。ちなみに、同時期にメラニア大統領夫人は軍用機でフロリダ州の別荘マールアラーゴに飛んでいる。「夫婦閉鎖」の解消は既に諦めているのだろうか。
実は、演説を中止するという選択肢もなくはない。憲法には大統領が定期的に議会に報告する義務が定められているが、その報告は20世紀初頭までは書簡で行われていた。1913年にウッドロー・ウィルソン大統領が気付いたのは、演説ならば政策への支持集めに使えるということ。さらにロナルド・レーガン大統領が定着させたのが、演説でアメリカを褒めることだ。1983年に「The state of the union is strong(アメリカの現状は盤石だ)」とレーガンが断言したときから、同義の表現が毎回演説で使われるようになった。トランプも昨年、レーガンと同じ言葉を使った。
今回もそうしたかったはずだが、政府閉鎖中のアメリカの状況はみっともないものだった。給与がもらえない政府職員は炊き出しでしのいだ。沿岸警備隊は生活に苦しむ職員にガレージセールの実施を勧めた。FBIはタイヤが買えなかった。食品医薬品局は食品検査が、国土安全保障省は空港の保安検査がまともにできていなかった。国立公園局はゴミの回収ができなかった。
首都ワシントンもゴミだらけだったことを指し、風刺画はトランプ政権下のアメリカの現状を揶揄している。いくら事実にこだわらないトランプでも、これでは自慢できなかったのだろう。
1月25日にようやく閉鎖は解消され、一般教書演説は2月5日に行われる。でも、この風刺画はまだ捨てないほうがいい。2016年大統領選挙へのロシアの介入を調べるロバート・ムラー特別検察官の調査が大詰めを迎えているからだ。200件以上の重罪で30人以上が起訴されている。残るは大物一人。今回の風刺画ではトランプがゴミ箱に入っているが、それをブタ箱に描き直すと次回に使えるかもしれないね。
<本誌2019年02月12日号掲載>
※2019年2月12日号(2月5日発売)は「袋小路の英国:EU離脱3つのシナリオ」特集。なぜもめている? 結局どうなる? 分かりにくさばかりが増すブレグジットを超解説。暗雲漂うブレグジットの3つのシナリオとは? 焦点となっている「バックストップ」とは何か。交渉の行く末はどうなるのか。
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