コラム

ロシア疑惑の黒塗り資料に浮かび上がるトランプの影(パックン)

2018年12月21日(金)17時40分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

Many Redactions, One Deduction (c) 2018 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<事件の背景や詳細を描く資料からは、事件の中心人物としてのトランプの姿が見えてくる>

クリスマス前にプレゼント交換が始まった! マイケル・フリン元大統領補佐官は、2016年の米大統領選挙へのロシア介入などを捜査するロバート・ムラー特別検察官に、19回にもわたる聴取で有力な情報をあげた。代わりにムラーは、FBIへの偽証の罪を認めていたフリンに「実刑を求刑しない」というプレゼントをくれた。もともと悪い子でも、いい子になると報われる! 子供の夢が崩れそうなクリスマス・ストーリーだけど。

同時期に、ドナルド・トランプ大統領の元顧問弁護士で、連邦議会への偽証を認めていたマイケル・コーエンもムラーの捜査に協力し、代わりに求刑を軽減してもらった。ただしコーエンは別途捜査中のニューヨークの連邦検察には協力しなかったので、こちらの検察官は厳しい量刑を求めた。プレゼント交換、不成立!

さらに同時期に、もっと悪い子が出た。銀行詐欺などで有罪評決を受けていたトランプの元選対本部長ポール・マナフォートは終身刑を回避するため、トランプに関する情報をムラーに全て話すと約束し、司法取引に合意。しかしその後、虚偽供述を繰り返し、さらにトランプの側近と連絡を取り続けていたという。当然、ムラーは怒り、合意を破ったとして取引を取り消すことにした。プレゼント回収!

この3件の動きはどれも最近、ムラーが裁判所に提出した資料から明らかになったもの。どれも複雑で幅広い捜査の核心に迫る有力な情報源だが、残念ながら、どれもひどいほど黒塗りされている。現職大統領に関する情報をなるべく出さないようにしている趣旨はもちろん分かる。例えば、そこでは実名ではなくIndividual 1(個人1)が使われることが多い。しかし、その定義として「後に大統領になった候補」などとなっているため、誰もがトランプだと分かる。黒塗りされてこそ、黒く見えるのだ。

風刺画が指摘するとおり、一部しか読めなくても、事件の背景や詳細を描く資料から、事件の中心人物としてのトランプの姿がはっきり見えてくる。ただ、違う見方をする人がいるのも事実だ。資料公表を受けて、「これで完全に大統領の無罪確定だ!」と......大統領本人がツイートしている。サンタを信じても、この見方は信じないほうがいいと思う。

【ポイント】
REDACTED

編集済みの

DEFENDANT
被告

SENTENCING
判決言い渡し

<本誌2018年12月25日号掲載>


※12月25日号(12月18日発売)は「中国発グローバルアプリ TikTokの衝撃」特集。あなたの知らない急成長動画SNS「TikTok(ティックトック)」の仕組み・経済圏・危険性。なぜ中国から世界に広がったのか。なぜ10代・20代はハマるのか。中国、日本、タイ、アメリカでの取材から、その「衝撃」を解き明かす――。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ネタニヤフ氏の汚職裁判12日に再開 イスラエル、非

ビジネス

米2月PCE価格指数、0.4%上昇に伸び加速 利下

ワールド

イスラエル首相、レバノンとの和平交渉開始指示 米で

ワールド

NATO、対イラン作戦で米要請に対応 当初支援遅れ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポケモンが脳の発達や病気の治療に役立つかも
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 5
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 6
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 7
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 8
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    「嬉しすぎる」アルテミスII打ち上げのNASA管制室、…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 7
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 8
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 9
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 10
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story