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風刺画で読み解く中国の現実 Superpower Satire (CHINA)
中国企業は全て共産党のスパイ? 大人気TikTokの不幸なジレンマ
TikTok's Dilemma / (c)2020 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<創業者が本土の保守派から「売国奴」呼ばわりされるTikTok。国内からは「両面性」を非難され、アメリカからの信頼も得られないという始末>
トランプ米大統領は8月6日、中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)や華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)に続き、大人気のTikTok(ティックトック)やWeChatの運営会社との取引を禁止する大統領令を出した。その前日にはマイク・ポンペオ国務長官が、アメリカの通信ネットワークから中国の影響力を排除する「クリーンネットワーク」という構想を発表している。
中国の企業は全て共産党のスパイ? それは考え過ぎだろう。WeChat を運営する騰訊(テンセント)の創業者・馬化騰(マー・ホアトン)は財界人として最近、名誉的に地位を与えられた共産党員でしかない。TikTokの創業者・張一鳴(チャン・イーミン)も、中国の保守派から「売国奴」と罵られるほどアメリカを賛美する男だ。1970~80年代生まれの彼らは父母の世代と違い、共産主義者ではなく金儲け主義者。政治より利益が最優先で、WeChatには中国国内向け「微信」と国外向けWeChatが、TikTokも国外専用のTikTokと中国本土専用の「抖音(ドウイン)」がある。中国本土の厳しいネット検閲を避け、海外で利益を上げるためだ。
ただし、中国IT企業のこのような「両面性」は中国国内から非難されている。そして、中国企業の本質が変わらない限り、アメリカからも信頼は得られない。最も根本的な問題は共産党の指導に基づく「中国の特色ある社会主義」体制だろう。中国憲法は「社会主義制度を破壊する全ての組織と個人を禁止する」と強調。全ての中国企業が官民問わず党組織を設立し、党の活動を展開することも定められている。テンセントやTikTokを運営するバイトダンスにも、もちろん党委員会がある。
「星星之火、可以燎原」(小さな火花も広野を焼き尽くす)という毛沢東の言葉のように、至る所に存在する共産党組織は70年前、国民党に勝った「秘密兵器」。現在の中国は9000万人以上の共産党員がいる「党国」だ。「中国の特色ある共産主義」の火花はいつかネットを焼き尽くすこともできる。
国外でも中国でも儲けたい。だが、中国の体制が変わらない限り努力しても世界の信頼は得られず、国内の非難も止まらない......。中国企業の不幸な「左右為難(ジレンマ)」だ。
【ポイント】
馬化騰 1971年海南島生まれ。深圳大学コンピューター学部を卒業後、1998年にテンセントを創業。全国人民代表大会の人民代表も務める。英語名はポニー・マ―。
張一鳴 1983年福建省生まれ。天津の南開大学を2005年に卒業。12年にバイトダンス創業。2016年に抖音を始め、2017年に米アプリ「ミュージカリー」を買収しTikTokと統合した。
<本誌2020年8月25日号掲載>
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