コラム

復活に向け動き出したトランプに名門一族の御曹司もひれ伏した

2021年06月22日(火)15時30分

トランプは政治活動を再開(6月5日、サウスカロライナ州で)AP/AFLO

<SNSから締め出しが続く前大統領だがその圧倒的な影響力は健在。ブッシュ一族のプリンスが見せた「裏切り行為」がトランプ一強を物語る>

フェイスブックやツイッターからの締め出しが続き、新たに開設したブログもたちまち閉鎖に追い込まれるなど、トランプ前大統領はアメリカ社会でつまはじきにされているように見えるかもしれない。しかし、政治的復活へに向けて動き出した前大統領の先行きは決して暗くない。

選挙結果の予測市場を見ると、次回の2024年の米大統領選でトランプが勝つ確率は、ハリス副大統領(20%)、バイデン大統領(16.7%) に次ぐ3 位(11.1%)。トランプ自身も、最近のテレビ出演などで大統領選再出馬に色気を見せている。

歴史に照らせば、トランプの大統領返り咲きは難しそうに見える。現職大統領として臨んだ大統領選で敗れた人物がのちにホワイトハウスを奪還した例は、19世紀のクリーブランド元大統領だけ。再選に失敗したカーター元大統領と父ブッシュ元大統領は権力闘争の世界から潔く身を引いた。

しかし、型破りの大統領だったトランプの今後を予測する上では、ほこりをかぶった歴史書をひもといてもあまり参考にならないのかもしれない。トランプの政治家としての驚異的な強さは、米政界屈指の名門一族であるブッシュ家の御曹司が最近取っている行動にはっきり見て取れる。

トランプは2016年大統領選の選挙戦でブッシュ家を激しく攻撃することにより、党の候補者へのし上がっていった。父ブッシュと息子ブッシュの両元大統領の政治を嘲笑し、この年の共和党予備選でトップランナーと目されていたジェブ・ブッシュ(父ブッシュの次男、息子ブッシュの弟)に対する卑劣な中傷キャンペーンに多くの選挙資金をつぎ込んだ。

ところが、22年中間選挙のテキサス州司法長官選に名乗りを上げているジェブ・ブッシュの長男ジョージ・P・ブッシュは、トランプを称賛している。共和党政治家としての未来を考えれば、父と祖父と伯父を裏切ることになっても、トランプに服従しなくてはならないと理解しているのだ。

世論調査を見れば、この若き御曹司の振る舞いが政治的に賢明なものだと分かる。最近の世論調査によれば、共和党支持者のうちでトランプが2024年の大統領選に出馬すべきでないと考える人はわずか28%にすぎない。

一方、共和党支持者の61%は、2020年の大統領選でトランプが不当に勝利を奪われたという見方を支持している。つまり、アメリカ国民全体で見ればトランプは歴史上屈指の不人気な大統領経験者だが(支持率が32%なのに対し、不支持率は55%に達している)、もし2024年の大統領選に出馬すれば、共和党の候補者指名を獲得することはほぼ確実だ。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 7
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story