コラム

43歳でスーパーボウルを制したブレイディに学ぶリーダーシップ

2021年02月17日(水)10時45分

どの「チーム」よりも多くのスーパーボウル優勝を成し遂げたブレイディ BRIAN SNYDERーREUTERS

<ベテラン選手として見せた司令塔の心得はアメフトやスポーツの世界にとどまらない>

トム・ブレイディを「勝者の中の勝者」と呼んでもいいだろう。

2月7日、NFL(米プロフットボール)の年間王者決定戦「スーパーボウル」でタンパベイ・バッカニアーズがカンザスシティー・チーフスを破り、ブレイディは前季まで在籍したニューイングランド・ペイトリオッツ時代と合わせて7度目の栄冠に輝いた。7度の優勝は、NFLのどのチームよりも多い。来年、8度目の優勝を果たせば、子供時代の憧れであるジョー・モンタナの2倍の優勝回数を記録することになる。

ブレイディを「数々の逆境をはねのけた男」として描くこともできる。バッカニアーズのクオーターバック(QB)として、世界屈指のQBであるドリュー・ブリーズ、アーロン・ロジャース、パトリック・マホームズが率いるチームを立て続けに破り、ポストシーズンに精彩を欠いていたバッカニアーズを優勝に導いたのだ。

ブレイディを「超人」と位置付けることもできる。43歳のQBがスーパーボウルを制したのは史上最高齢だ(それまでの最高齢記録もブレイディが持っていた)。昨シーズンまでの70年間にNFLで43歳のQBが成功させたタッチダウンパス(TDパス)は合計21回だったが、ブレイディは今シーズン、1人で40回成功させた。

ブレイディの偉業からは、スポーツの世界に限定されないリーダーシップの教訓を引き出すことができる。

1.何歳になっても学び続けよ。ブレイディはペイトリオッツにとどまってもっと優勝を重ねることも目指せたが、不振にあえぐバッカニアーズに移籍する道を選び、新しいチーム文化と戦略を積極的に学んだ。ブレイディが年を重ねて逆に若返っているように見えるのは、新しいものごとを学ぶことに貪欲だからだ。

2. 勤勉は才能に勝る。NFLドラフトのブレイディの指名順位は199位。屈強でもなく、スピードがあるわけでもなかったからだ。QBとしてレギュラーを獲得するとは、誰も予想していなかった。しかし、徹底した食事管理、独特なストレッチ、シーズンオフの自主トレなど、勤勉に努力を重ねることにより、史上最高のQBと呼ばれるまでになったのだ。

3. 世間の評価に関係なく、信用すべき人を信じる。ブレイディは、今年のスーパーボウルで3つのTDパスを成功させた。パスの相手は、全て昔のチームメイトだった。2つのタッチダウンを決めたロブ・グロンコウスキーは、2年前にけがで引退したが、ブレイディと一緒に戦うために現役復帰した。最後のタッチダウンを決めたアントニオ・ブラウンは、度重なるスキャンダルが原因で所属チームが決まらずにいた選手だ。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

脅迫で判事を警察保護下に、ルペン氏有罪裁判 大統領

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story