コラム

時代遅れでポンコツのアメリカ大統領選挙はこう変えよ

2020年11月08日(日)09時00分

では、単に選挙が上手な人物ではなく、真の統治能力を持った人物を選ぶために有効なシステムを設計するには、どうすればいいのか。それは難しくない。大統領選のプロセスに、スポーツ選手のランキングのような仕組みと、テレビの無人島サバイバル番組のような設定を取り入れればいい(いずれもアメリカ人の大好物だ)。

その上で2段階の選考過程により、候補者をふるいに掛けることを提案したい。選考プロセスの第1段階は、大統領選投票日の3年近く前に始まる。大統領を目指す候補者たちはこの期間に、スキルを競い合う大会に参加し、マネジメント手腕の査定を受け、コミュニケーション能力も採点される。

まず、スキルに関しては、テレビのクイズ番組のような形式で内政と外交に関する知識量を競う大会や、未来のことを予測する能力を競う大会など、いくつかのトーナメントを行う。大統領を務めるためには、豊富な知識が不可欠だ。日本の外相の名前やNATO(北大西洋条約機構)の設立理由を答えられない人に、大統領になってもらっては困る。

400万人超の職員を擁する行政機構のトップ

それに、大統領には為替相場や株式相場の動向について平均以上の予測能力を持っていてほしい。少なくともその程度の予測能力を持っていない人に、国のリーダーは務まらない。高い予測能力は良質な意思決定の土台だ。経営コンサルタントたちが有力企業の経営チームの力量に目を光らせるのと同じように、大統領を目指す人たちのマネジメント手腕も厳しく点検されるべきだろう。

何しろ、アメリカ大統領は400万人を超す職員を擁する行政機構のトップなのだ。その人物は、正しい問いを発することができているか。部下に適切なフィードバックを行っているか。本当に優秀な人物をスタッフに登用しているか。組織づくりはうまくいっているか。こうしたことを確認すべきだ。

さらに、大統領を目指す人は、高度な説得力を持ち、国民の心を動かせなくてはならない。人々に思わず耳を傾けさせるようなコミュニケーション能力を持っている必要があるのだ。その人物は、高い言語運用能力と即興での対処能力を併せ持っているか。聞き手の五感に働き掛けると同時に、客観的なデータに基づいて話すことができるか。このような点を見極めたい。

この第1段階は、約18カ月間にわたって行う。スキルを精査するためにも、予測能力を試すためにも、これくらいの期間が必要だからだ。最終的にそれぞれの候補者に点数を付け、スポーツ選手のようにランク分けを行う。

例えば、その年の大統領選に名乗りを上げた候補者が20人いたとすれば、上位5人がリーグA、次の5人がリーグB、その次の5人がリーグC、最下層の5人がリーグDという具合に振り分けられる。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨

ビジネス

米新規失業保険申請、2.1万件減の22.1万件 予

ビジネス

ECB、5会合連続で利下げ 政策の制約度は低下

ビジネス

米人員削減、2月は245%増 連邦政府職員の解雇が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 9
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 10
    理不尽過ぎるトランプ関税にカナダが激怒、「狙いは…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story