コラム

醜悪な討論会の「勝者」は誰か、トランプ感染は大統領選をどう変えるか

2020年10月05日(月)16時00分

討論会のハイライトを挙げるとすれば、白人至上主義団体をめぐるやりとりだ。司会のウォレスは、トランプが白人至上主義団体を批判するように水を向けた。するとトランプは、その類いのグループが騒乱を起こさないよう求めるとしつつも、悪名高いヘイト集団のプラウド・ボーイズに対して「下がって待機せよ」と述べた。

討論の中でトランプは、支持者に対して「都市部」の投票所を警備するよう呼び掛けることもした。「都市部」というのは、実質的に黒人と中南米系の住民が多い地区を意味する。ヘイト集団に対して、民主党支持の有権者を威嚇せよというシグナルを発したとの印象は拭えない。

次はズームで討論会?

この後、プラウド・ボーイズはさっそく、自分たちのロゴに「下がって待機せよ」という言葉を添えた画像を作って拡散させ始めた。

トランプは、討論会後もすぐには白人至上主義団体を非難しようとしなかった。10月1日になってようやく、テレビ番組で批判したが、その直後に彼はツイッターを更新して支持者に「トランプのために戦おう」と呼び掛けた。

討論会で最も優れた予測を示したのは、バイデンだった。トランプは、バイデンが新型コロナウイルスを過剰に恐れていると嘲笑した。それに対してバイデンは、トランプが自らのことしか考えておらず、選挙集会の参加者や面会する相手の安全を軽んじていると批判した。トランプはこの数日後、自身が感染者と接触したことを知りながら、マスクなしの資金集め集会に参加した。討論会でのバイデンの批判が正しかったことになる。

一方、討論会で最もラッキーな経験をしたのはトランプのほうだ。

討論会の直前、トランプが過去15年間のうち10年分の連邦税を納めておらず、2016年と17年も750ドルずつしか納税していなかったことが明るみに出た。しかし、討論会ではこの件でほとんどダメージを被らずに済んだ。

税金の話題は、トランプが明らかに虚偽の回答をして、あっさり終わってしまった。司会者は慎重にこの問題を持ち出しただけで、トランプの主張の矛盾点を深く追及しようとしなかった。

トランプの新型コロナウイルス感染により、残り2回のテレビ討論会をビデオ会議で開催して、討論会の再度の崩壊を避けられる可能性が出てきた。ビデオ会議で2人の間に大きな「社会的距離」を確保し、ルールを守らない発言者の音声を司会者が消せるようにすることほど、激しい泥仕合を防ぐために有効な方法はないだろう。

ほとんどのアメリカ国民はもうビデオ会議にうんざりしてきているが、トランプとバイデンのビデオ会議であれば歓迎するだろう。

<2020年10月13日号掲載>

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

高市氏「ベネズエラの民主主義回復に努力」、米攻撃支

ワールド

サウジ、イエメン南部問題で対話呼びかけ 分離派が歓

ワールド

焦点:ベネズエラ介入でMAGA逸脱、トランプ氏は「

ビジネス

追加利下げは「まだ先」の可能性=米フィラデルフィア
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...強さを解放する鍵は「緊張」にあった
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 4
    2026年の節目に問う 「めぐみの母がうらやましい」── …
  • 5
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 8
    松本清張はなぜ「昭和の国民作家」に上り詰めたのか…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 3
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 4
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 5
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 10
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story