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醜悪な討論会の「勝者」は誰か、トランプ感染は大統領選をどう変えるか
討論会のハイライトを挙げるとすれば、白人至上主義団体をめぐるやりとりだ。司会のウォレスは、トランプが白人至上主義団体を批判するように水を向けた。するとトランプは、その類いのグループが騒乱を起こさないよう求めるとしつつも、悪名高いヘイト集団のプラウド・ボーイズに対して「下がって待機せよ」と述べた。
討論の中でトランプは、支持者に対して「都市部」の投票所を警備するよう呼び掛けることもした。「都市部」というのは、実質的に黒人と中南米系の住民が多い地区を意味する。ヘイト集団に対して、民主党支持の有権者を威嚇せよというシグナルを発したとの印象は拭えない。
次はズームで討論会?
この後、プラウド・ボーイズはさっそく、自分たちのロゴに「下がって待機せよ」という言葉を添えた画像を作って拡散させ始めた。
トランプは、討論会後もすぐには白人至上主義団体を非難しようとしなかった。10月1日になってようやく、テレビ番組で批判したが、その直後に彼はツイッターを更新して支持者に「トランプのために戦おう」と呼び掛けた。
討論会で最も優れた予測を示したのは、バイデンだった。トランプは、バイデンが新型コロナウイルスを過剰に恐れていると嘲笑した。それに対してバイデンは、トランプが自らのことしか考えておらず、選挙集会の参加者や面会する相手の安全を軽んじていると批判した。トランプはこの数日後、自身が感染者と接触したことを知りながら、マスクなしの資金集め集会に参加した。討論会でのバイデンの批判が正しかったことになる。
一方、討論会で最もラッキーな経験をしたのはトランプのほうだ。
討論会の直前、トランプが過去15年間のうち10年分の連邦税を納めておらず、2016年と17年も750ドルずつしか納税していなかったことが明るみに出た。しかし、討論会ではこの件でほとんどダメージを被らずに済んだ。
税金の話題は、トランプが明らかに虚偽の回答をして、あっさり終わってしまった。司会者は慎重にこの問題を持ち出しただけで、トランプの主張の矛盾点を深く追及しようとしなかった。
トランプの新型コロナウイルス感染により、残り2回のテレビ討論会をビデオ会議で開催して、討論会の再度の崩壊を避けられる可能性が出てきた。ビデオ会議で2人の間に大きな「社会的距離」を確保し、ルールを守らない発言者の音声を司会者が消せるようにすることほど、激しい泥仕合を防ぐために有効な方法はないだろう。
ほとんどのアメリカ国民はもうビデオ会議にうんざりしてきているが、トランプとバイデンのビデオ会議であれば歓迎するだろう。
<2020年10月13日号掲載>

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