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冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
米「保守派」が中絶を禁止したい理由、完全禁止を決めた州の数
「生命の尊重(プロライフ)」を掲げる中絶反対派のグループ(2020年3月) Tom Brenner-REUTERS
<米中間選挙の争点でもあった人工妊娠中絶の権利。既に13州が中絶を完全に禁止していた>
1973年に確定したロー対ウェード判決により、アメリカでは人工妊娠中絶の権利が保障されていた。
だが共和党は徐々に保守系判事を最高裁判所に送り込み、特に2017年に発足したトランプ政権は、保守派判事を3人任命。これで最高裁判事の構成は保守5、中道1(ジョン・ロバーツ長官)、リベラル3となって保守派が多数を占めた。
この時点でロー対ウェード判決の変更は時間の問題となっており、今年6月についに変更された。これによって、各州は中絶禁止法を制定することが認められたのである。
現時点では13の保守州が中絶を完全に禁止しており、深刻な社会問題と化している。(編集部注:11月5日時点)
レイプや近親相姦の結果の妊娠でも中絶は認められないばかりか、母体の生死に関わるケースでも、証拠不十分だと中絶手術を実施した医師は逮捕されるという極端な状態が現実のものとなり、女性の人権は著しく侵害されている。
そこまで極端な禁止を求める背景には、キリスト教福音派の「生命の尊重」重視の考えや、多様な宗教や人種を集めて繁栄しているグローバル経済への憎悪などが無意識に結び付いた、アメリカだけの異様な「保守」思想がある。
中間選挙でも大きな争点となった。(編集部注:なお、11月8日の中間選挙に合わせ、5州で中絶に関する住民投票も実施された。うち4州で中絶の権利を認める民意が示された)
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