コラム

米「保守派」が中絶を禁止したい理由、完全禁止を決めた州の数

2022年11月11日(金)20時15分
中絶反対派

「生命の尊重(プロライフ)」を掲げる中絶反対派のグループ(2020年3月) Tom Brenner-REUTERS

<米中間選挙の争点でもあった人工妊娠中絶の権利。既に13州が中絶を完全に禁止していた>

1973年に確定したロー対ウェード判決により、アメリカでは人工妊娠中絶の権利が保障されていた。

だが共和党は徐々に保守系判事を最高裁判所に送り込み、特に2017年に発足したトランプ政権は、保守派判事を3人任命。これで最高裁判事の構成は保守5、中道1(ジョン・ロバーツ長官)、リベラル3となって保守派が多数を占めた。

この時点でロー対ウェード判決の変更は時間の問題となっており、今年6月についに変更された。これによって、各州は中絶禁止法を制定することが認められたのである。

現時点では13の保守州が中絶を完全に禁止しており、深刻な社会問題と化している。(編集部注:11月5日時点)

レイプや近親相姦の結果の妊娠でも中絶は認められないばかりか、母体の生死に関わるケースでも、証拠不十分だと中絶手術を実施した医師は逮捕されるという極端な状態が現実のものとなり、女性の人権は著しく侵害されている。

そこまで極端な禁止を求める背景には、キリスト教福音派の「生命の尊重」重視の考えや、多様な宗教や人種を集めて繁栄しているグローバル経済への憎悪などが無意識に結び付いた、アメリカだけの異様な「保守」思想がある。

中間選挙でも大きな争点となった。(編集部注:なお、11月8日の中間選挙に合わせ、5州で中絶に関する住民投票も実施された。うち4州で中絶の権利を認める民意が示された)

20221115issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2022年11月15日号(11月8日発売)は「日本人が知らない アメリカの変貌」特集。中間選挙が示した「政治の衰退」。この数年の政治・社会・経済の変化を現地からの最新報告であぶり出す


プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、ジェット燃料不足のキューバ支援を表明

ビジネス

オアシス、エス・エム・エス株を買い増し 17.58

ワールド

マクロスコープ:日銀審議委員人事で探る高市政権の市

ビジネス

ホンダ、通期純利益予想を維持 円安効果で売上収益は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 4
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 7
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 8
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 9
    衆院選で吹き荒れた「サナエ旋風」を海外有識者たち…
  • 10
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story