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第2次世界大戦を防げなかった国際連盟の教訓とは
今回の国連改革論議においても、この点をふまえた慎重で多角的な検討が必要と思います。今回は、キーウ郊外ブチャで行われた残虐行為に関して、ゼレンスキー大統領のオンラインによる抗議演説が安保理で行われました。こうした場合も、仮にロシアが安保理から追放もしくは脱退しているようですと、少なくとも安保理は、当事者を交えた外交の場としては成立しなくなるわけです。拒否権というのは、その意味で安保理を外交チャンネルとして維持する「知恵」でもあるのです。
同じような意味で、国連人権理事会におけるロシアの資格を停止する動きにも疑問があります。ロシアによる居直りや、事実の改ざんを目の前で行われるのは、極めて不愉快であることは認めます。ですが、当事者を批判する場をわざわざ無くして、欠席裁判だけの場にする姿勢は、これも国連という外交の場を機能不全にする懸念があると考えられるからです。
一方で、現在の国連改革の論議の中で、突っ込んだ議論が必要な点が他にあります。それは事務総長の人事です。初期の国連では、何よりも東西陣営による厳しい対決が続いていました。そんな中で、国連が機能するためには暗黙の了解として、国連総長には、「西側でも東側でもない中立国出身の外交官」から選出するという「知恵」が働いていました。
初代のリー(ノルウェー)、殉職した2代目のハマーショルド(スウェーデン)、3代目のウ・タント(ビルマ)、5代目のデクエヤル(ペルー)などがそうで、安保理の強大な権限を向こうに回して、粘り強い交渉を通じて国連の存在意義を守ってきた人々です。7代目のアナン(ガーナ)もそのカテゴリに入れていいでしょう。
事務総長の人選も重要
ですが、近年の人選には首をかしげることが多くなりました。例えば、8代目の潘基文(韓国)は、国連軍(PKF)が活動している紛争の当事国から選出されるという異常な人事となっています。これでは、その紛争に関する調停を国連は放棄したようなものです。
また現在のグテーレス(ポルトガル)は、ご本人が「タフなネゴシエーター」とは言えない人柄なこともありますが、EU加盟国という「偏った」出身であり、今回の危機においても実務的な調停能力は発揮できていません。
やはり創設時の精神に戻って、事務総長は、G7、上海機構、EU以外、できればG20以外で、なおかつ現在進行形の紛争当事国では「ない」国もしくは地域の出身とするのが良いと思います。
また、今後の事務総長選については、これまで以上に各候補の政策と人柄そして実績を幅広く公開して、国際世論による厳しい洗礼を受け、切磋琢磨された中で人選することができればと思います。タフであって、野心がなく、出身国の利害などに引っ張られない優秀な外交官を総長に選ぶ仕組み。これは国連改革の重要な柱になると思います。
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