コラム

バイデン政権は、民主党中道派と左派のいわば「連立政権」

2020年12月17日(木)14時30分

2009年と2021年を比べて見れば、経済的な環境には大きな違いがあります。2008年9月のリーマン・ショックを受けて、金融危機が迫るなかで雇用も消費も冷え込んでいた2009年と比べて、コロナ禍が経済に大きな影響を与えている2021年の状況が似ているかというと、全く違います。

2021年は、非常に特殊な状況になっています。航空、ホテル、外食、サービスなどコロナ禍で壊滅的な打撃を被っている産業がある一方で、アメリカのGDPの根幹を形成している知的産業はテレワークなどでどんどん価値を創造しています。その結果として、アメリカの株式市場は新興企業向けのNASDAQだけでなく、NYSEも高値圏にあります。結果として、当然のことながら格差はどんどん拡大しています。

2009年の経済運営は、当座は「全体の成長を促す」だけで当面は許された訳ですが、2021年の経済運営ははるかに難しい状況です。具体的には、3つの難題を抱えていることになります。

それは、
▼コロナ禍のなかでの経済対策、特に失業対策を感染収束まで継続する
▼コロナ禍が過ぎても残る雇用や格差の構造に対して世論が納得する対策を行う
▼その一方で、全体的に好調な景気や株価の足を引っ張ることはできない
という3つです。

これは2009年とは全く次元の違う困難です。前FRB議長のイエレンを財務長官に迎えたのは、こうした困難に対処するためだと理解できます。

今回は、軍事外交については触れませんが、そうした問題も含めて、バイデン次期政権は、オバマ政権とは全く異なる環境の下で、全く異なる課題に取り組むことが要請されていると思います。

20241203issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年12月3日号(11月26日発売)は「老けない食べ方の科学」特集。脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす最新の食事法。[PLUS]和田秀樹医師に聞く最強の食べ方

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

インド競争委、米アップルの調査報告書留保要請を却下

ビジネス

減税や関税実現が優先事項─米財務長官候補ベッセント

ビジネス

米SEC、制裁金など課徴金額が過去最高に 24会計

ビジネス

メルクの抗ぜんそく薬、米FDAが脳への影響を確認
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story