コラム

コロナ「出口戦略」の鍵となる検査体制、どうすれば拡充できるのか?

2020年04月28日(火)14時30分

これに対して、政府は「PCRセンターの設置」を行ったり、「歯科医師にも検体採取を認める」といった策を打ち出しています。ですが、こうした対策は「検体採取の効率をアップするだけです。問題は、これに対して検査体制が十分ではないという心配です。

採取された検体は、多くの場合は保健所そして民間の検査機関で検査が行われます。これは、専用の機器を使用した遺伝子検査となり、検査の実施にも、そして結果として判定を下すにも専門的な知識と技術が必要となります。

こうした検査員になるには、「臨床検査技師資格」の試験をパスして国家資格である「臨床検査技師」資格を持っていること、これに加えて、「遺伝子検査の経験が十分にある」ことが必要とされています。この検査員の増員が必要です。

一方で、検査の方法については日進月歩のようです。CDC(米疾病予防管理センター)の検査キット、スイスのロシュ社のキット、島津製作所が開発したものなど、様々なタイプがあります。新しいものほど、スピードアップと効率化が図られていますが、同時にあるタイプの検査には専用の機器が必要だったり、専用の試薬が必要になったりします。

ですから、PCR検査を増やすには、「検査員の増員」、「適切な検査キットの選択と、必要な機材と試薬の確保」という2つの条件が必要になってくるわけです。アメリカの場合は、もしかすると、日本と比較して検査の精度は劣るのかもしれませんが、各州の知事や大統領が「検査キットの確保」や「予算の確保」について、毎日のように議論したり、批判の応酬をしたりしています。

日本の場合も、検体採取という入り口を増やすだけではダメで、検査員をどうするのか、そして検査キットはどうするのか、といった問題についてもっと透明性が必要と思います。所管の厚生労働省や各地方自治体が、検査員や検査キットの問題について、「現状はどうなっているのか」「何が問題であり、今後はどう解決するのか?」という「具体的な情報開示」を行って問題解決のスピードアップを図るべきだと思います。

現在は感染が拡大する中で、検査の効率が追いつかないことで救急救命にも影響が出ている状態です。待ったなしの問題でになっています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋

ビジネス

投資家がリスク選好強める、現金は「売りシグナル」点

ビジネス

AIブーム、崩壊ならどの企業にも影響=米アルファベ

ワールド

ゼレンスキー氏、19日にトルコ訪問 和平交渉復活を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story