コラム

オバマ大統領の広島訪問が、直前まで発表できない理由

2016年04月26日(火)16時45分


 さらに、このオバマ発言を受けるかのように、先週23日、ウェンディ・シャーマン前国務次官(長官、副長官に次ぐナンバー3でした)がCNN(電子版)に寄せた寄稿で、「過去を認めて未来を見据える姿勢を地域の同盟国に示すことが米国の国益にかなう(訳文は共同通信による)」として、大統領に決断を呼び掛けています。

 これと並行して、日本のメディアでは、おそらく駐日アメリカ大使館筋と思われますが、訪問はサミット散会直後の5月27日午後になりそうだといった、断片的ではありますが、どんどん具体的な話が出てくるようになりました。

 それでは、大統領自身が言うように、どうしてオバマ政権はこの「広島訪問」を「直前にならないと発表できない」のでしょうか?

 やはり国内の反対論を意識していると思います。大戦末期の日本政府が、「本土決戦」を叫び、「一億玉砕」を掲げていた中で、「原爆が戦争を終わらせて、何万という米軍の将兵の生命を救った」という「伝説」は、アメリカの歴史観の「公式見解」になってしまっています。

 もちろん、それが14万という非戦闘員の殺戮を正当化するのか、ということについては、現在のアメリカ世論は40%対60%くらいで「正当化しない」方に傾きつつあります。ですが、それでも40%くらいは「公式見解として正当化できる」と思っている中では、「広島献花」は政治的リスクを伴います。

 例えば、先月のワシントン・ポストへの寄稿で、オバマ大統領は、次のようなことを述べています。

「As the only nation ever to use nuclear weapons, the United States has a moral obligation to continue to lead the way in eliminating them.」(唯一の核兵器使用国として、アメリカは、核廃絶へのリーダーシップを取り続ける道徳的責務を負う)

 この表現について、そんな言い方では「ほとんど謝罪ではないか」といった批判が出ているのです。「道徳的責務をアメリカが背負っているのであれば、それは原爆使用を非道徳だと自身で認めることになる」というのです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国務長官、デンマークと来週会談 グリーンランド巡

ビジネス

米製造業新規受注、10月は前月比1.3%減 民間航

ワールド

米ホリデーシーズンのオンライン支出、過去最高の25

ワールド

米、ベネズエラ原油取引・収入の管理必要 影響力確保
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじゃいる」──トランプの介入口実にデンマーク反発
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 6
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 7
    公開されたエプスタイン疑惑の写真に「元大統領」が…
  • 8
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 9
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story