コラム

乱射事件、「イスラム教徒の容疑者」に苦悩するアメリカ

2015年12月04日(金)17時25分

 ですが、現在は、状況が異なります。世論の厭戦感情が強いために対ISIL地上戦は不可能な一方、パリの事件が「他人事であるがゆえに、国内での不安が増す」という異常な状況にあるのです。

 そんな中、ドナルド・トランプという稀代のポピュリストは、事件の前日には「ISIL攻撃では不十分。アメリカでもテロリストを生み出したら、その家族をこっちが人質にとって、場合によっては殺すことにして対抗すべき」という極端な言論を展開しています。

 そのトランプは、「9・11の直後に、ニュージャージー州では何千人というイスラム教徒が集まって、勝利を喜んだ」(地元の人間として断言できますが、100%デマです)とか、「9・11はブッシュ政権時代に発生した。意味わかるだろ?」(ブッシュに責任があるような言い方で、これも大いに物議を醸しました)などという暴言もはいており、それが一部の支持者に受け入れられているのも事実です。

 そのような世相の中で、今回の事件が、世論の不安感情に「点火してしまう」こと、大統領もメディアもそれをおそれているのです。9・11直後とは、また別の形でアメリカは苦悩の中にあります。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米3月雇用22.8万人増で予想上回る、失業率4.2

ビジネス

米国株式市場・寄り付き=ダウ1000ドル超安 中国

ビジネス

6月までFRB金利据え置きの観測高まる、予想上回る

ワールド

トランプ氏、政策変えずと表明 「金持ちになれる絶好
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story