- HOME
- コラム
- プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
- シンガポール「創業者」、リー・クワンユー氏の功罪
シンガポール「創業者」、リー・クワンユー氏の功罪
そうではあるのですが、現在の成功と安定を見ていると、このリー氏の設計した都市国家のコンセプトは「賢人政治」という点も含めて隙がないように見えます。では、リー・クワンユー氏の思想にも、批判すべき点はないのでしょうか?
とんでもありません。例えば、有名な金大中氏との会談で、リー氏が言い放ったという「アジア人には民主主義は相応しくない」という発言に関しては、私は反対です。また89年の「六四天安門事件」に際して、いち早く共産党指導部の改革潰しを支持したということについても、私は異議があります。
シンガポールの場合は、特に独立後数年の間は、「マレー人との国内における平和的共存」という問題は、自由と民主主義といった理念よりも優先されたのです。というのは、華人とマレー人が共存できなければ国家は消滅する危険があったからです。その必然は、アジア全域においては一般化できるものではありません。
マレー人との共存という問題だけでなく、シンガポールという国は、正に都市国家、いや1つの企業体として、貿易だけで成り立っているという特殊性があります。地の利を生かした、そして港湾や空港のインフラ、人材という資源、そして英語圏という見えないインフラを生かした貿易立国という大前提があり、その成功のためには、採るべき政策は合理的な判断で比較的簡単に決定ができるのです。
ですが、中国や日本といった大国は、どんなにコストがかかっても、多様なものが主張しつつ共存し、その上で様々な衝突や摩擦からも「何かを生み出す」、つまりカルチャーや文明のレベルの「目に見えない価値」をつくることが求められます。そうした国々は、シンガポールとは規模も質も違うのです。
それにも関わらず中国の場合は、民主政体へと移行するタイミングをつかめずにいるわけで、仮にもリー・クワンユー氏の「遺言」ないし、シンガポールの成功例が、北京の中南海に影響を与えているのだとしたら、それは違うと思うのです。
また、本人は大真面目であったかもしれませんが、「欧米では可能な民主主義は、アジアには相応しくない」という言い方は、アジアの人びとの深層における劣等意識を触発してしまうように思います。
仮にそうであれば、中長期的にはアジアが欧米を越えた高度な文明に到達することを、かえって阻害しているとも言えるわけで、私はやはり一般化はできないように思うのです。それも含めて、一つの時代の終わりを感じさせる訃報でした。
博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日本社会の側にある 2025.04.02
内紛続く米民主党、震源地はニューヨーク 2025.03.26
トランプが南米ギャング団幹部を国外追放、司法との対決に直面 2025.03.19
株価下落、政権幹部不和......いきなり吹き始めたトランプへの逆風 2025.03.12
施政方針演説で気を吐くトランプに、反転攻勢の契機がつかめない米民主党 2025.03.06
令和コメ騒動、日本の家庭で日本米が食べられなくなる? 2025.02.26
ニューヨーク市長をめぐる裏切りのドラマがリアルタイムで進行中 2025.02.19
-
外資系顧客向けシステムエンジニア/システムインテグレータ・ソフトハウス
株式会社リファルケ
- 東京都
- 年収450万円~1,260万円
- 正社員
-
品川本社/ベンダーファイナンス営業 大手外資系ICTベンダー/業界未経験歓迎・リモートワーク可
NECキャピタルソリューション株式会社
- 東京都
- 年収400万円~630万円
- 正社員
-
経理財務/経理・財務/外資系フォワーダー/英語が活かせる
株式会社言語サービス
- 東京都
- 年収500万円~750万円
- 正社員
-
東京/外資系アカウント向けソリューション営業・グローバルシェアトップ企業/英語を活かせる
ジョンソンコントロールズ株式会社
- 東京都
- 年収400万円~750万円
- 正社員