コラム

「マタハラ降格違法」判決をどう生かすか?

2014年10月28日(火)12時56分

 日本の職場の現状を考えると、以上のような論点が出てくるわけですが、これはすべて「日本独自の終身雇用を前提とした年功序列制度」を前提として、そこで女性の妊娠・出産や子育てという事情との「折り合いをつける」という考え方です。

 ですが、これはグローバルなスタンダードから見ると、かなり変わった考え方であることも事実です。

 というのは世界の多くの労働市場では、基本的には「残業手当のつく」一般の社員は法制や組合が保護して時短も育休にも配慮をされる一方で、管理職は成果主義であると同時に雇用の保障はないというのが普通です。

 管理職を目指さない女性が出産や子育てとのバランスが確保される一方で、管理職を目指す女性の場合は、転職を繰り返すキャリア形成の中に「妊娠出産と子育て」の期間を計画的に入れていくことになります。

 今回の「降格違法判決」は生かさなくてはなりません。ですがその一方で、終身雇用や年功序列を前提として管理職という「日本の会社の内輪のサークル」に入ってきた女性だけには手厚い配慮がされ、例えばシングルマザーや非正規労働者の「ワーク・ライフ・バランス」についてまったく改善が進まないのでは困ります。

 またこれからのグローバルな競争の中で、いつまでも終身雇用、年功序列の制度を維持することが可能か、また適切かは議論が分かれるところだと思います。

 そう考えると、今回の判決をどう生かしていくかは、相当に多角的な議論が必要になります。時代を切り開くのは、政治や法制ではなく、具体的な民間企業の中での「圧倒的な成功事例」だと思うのです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

マクロスコープ:FRB議長人事、「無難で安心感」と

ビジネス

野村HD、10-12月期純利益は一時費用で10%減

ビジネス

日経平均は4日ぶり小反落、朝安後は下げ一服 個別物

ワールド

小泉防衛相、日米韓の防衛協力これまで以上に重要 韓
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大胆な犯行の一部始終を捉えた「衝撃映像」が話題に
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 8
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 9
    配達ライダーを飲み込んだ深さ20メートルの穴 日本…
  • 10
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 8
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story