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冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
天災続きのアメリカ北東部、対応にもお国柄
火曜日の23日に発生した、バージニアを震源としたM5・8の地震については、時間の経過と共に被害の規模が明らかになってきました。TV各局の報道によりますと、一番揺れが激しかったのは震源地のバージニア州のミネラルという人口500人弱の小さな町で、ここでは学校の校舎が大きく損傷しただけでなく、多くの住宅や商店に被害が出ています。
ニュース映像から判断すると、食料品店で商品の半分が棚から落ちているというのが、一番深刻なもののようで、恐らく震度5弱というあたりが最高だったと見ることができます。では、その程度の揺れでどうして大きな被害が出たのかというと、ミネラルの町におけるレンガ造りの煙突の損傷、ブロック塀の損傷などの映像を見れば一目瞭然です。レンガやブロックを単にコンクリで接着して積上げただけのものばかりなのです。
要するに、耐震性ということは全く考慮されていなかったわけです。一昨日お伝えした、ワシントン記念塔についても、その後ハッキリとしたヒビ割れが見つかって周辺の公園は無期限立ち入り禁止になりましたが、単純に石を積み上げただけの塔ということもあって、当局としては最悪の事態、つまり倒壊の危険性を感じているのだと思います。
驚いたのは、首都ワシントンの140校ほどある公立学校のほとんどが、地震の翌日の水曜日は安全確認のために休みになっているそうですし、震源地のミネラルでは向こう約10日間はとりあえず休校措置が取られるそうです。また、ワシントンにある国立大聖堂やスミソニアン博物館といったランドマークもかなり大きく損傷しているという報道があります。
ということで、100年に一度という地震の前には、何の対策もしていなかったことが露呈したアメリカ東部ですが、その同じ地域では、今度は今週末に大型のハリケーン「アイリーン」が直撃しそうということで大騒ぎになっています。「アイリーン」は本稿の時点では、フロリダ半島の東部をゆっくりと北上中で、中心の気圧は950ヘクトパスカルで現在も発達中という恐ろしいものです。
この「アイリーン」ですが、ジェット気流の関係で進路予想がかなり限定できており、米国東部の各州が全て影響を受けそうということもあって、上陸3日前の木曜の朝の時点から、全国ニュースもローカルも最大限の扱いになっています。大きな被害が予想されるノースカロライナ州の沿岸部、ニュージャージー州の沿岸部、ニューヨーク州のロングアイランドでは、大規模な避難が始まっていますし、地方自治体の中には非常事態宣言を早々と出すところも出ています。
例えば、長距離の特急列車を運行している「アムトラック」鉄道は、ワシントンとニューヨークを結ぶ北東回廊線について、上陸の予想が日曜の早朝であるにも関わらず、金土日の3日間の運休を決定しています。このあたりの割り切りの良さというか、諦めの早さというのは、公的交通機関の責任ということでは大いに疑問が残ります。
この鉄道の対応はともかく、全般的に早め早めの警告を行い、スムーズに避難を進めようという姿勢は、日本としても参考になるように思います。特にTVやラジオの報道については、日本の場合は実際に被害が出始めてからは本格的になりますが、接近数日前の時点での情報は、天気予報コーナーが中心で今ひとつ「大げさ度」が足りないのではないか、アメリカの派手な報道を見ているとそんな風に感じます。
避難体制についても、有無を言わさず「強制的な(マンデトリー)避難命令」を知事なり、市町村長がビシッと出すと、同時に州兵組織や各自治体などがマニュアルに基づいて対応して、避難所への誘導なりを徹底するのです。勿論、アメリカのハリケーン対策が立派かというと、2005年の「カトリーナ」の際の大失態という例もあるわけですが、この「カトリーナ」でブッシュ大統領を含めた多くの政治家が、政治生命を縮めた教訓も生きているのかもしれません。
とりあえず、私の住んでいる地域は内陸なので高潮の可能性はほぼゼロですが、洪水で道路が寸断されたり、強風の被害、長時間の停電というのは覚悟しています。地震対策では全くのアマチュアだった東部各州ですが、果たして「周到に準備した」ハリケーン対策の結果、どの程度被害を抑えることができたのかは、またこの欄でご報告しようと思います。
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