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冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
被災地へ、被災地から(その2)
被災地から東京に一旦引き上げると、ニュースは内閣不信任案の扱い一色でした。一方で、台風崩れの低気圧が北上し、被災地には大雨が降りました。陸前高田も被害に遭っていると聞き、胸の痛むのを覚えました。
一方で、政治は迷走しているように見えます。とりわけ現在進行中の不信任案を巡る動きは、被災地が渇望している復興事業を停滞させるものとして激しい非難を浴びています。そんな中、週明けには被災地に隣接した高台では、住宅地ニーズを見越して土地が暴騰している、そんなニュースも伝えられています。
では、このまま「政治を悪者に」し続けて、事態を更に悪化するのを眺めるしかないのでしょうか?
あるいは、一切の政争を否定して現政権下での決定を急がせる、これに対して野党が妨害したとしても、それを被災地の「正義」の名で断罪し続ければ、とにかく何かが決まり、何かが動き出すのでしょうか?
例えば、自民党の谷垣総裁が、突然「政争はやめます。復興会議の結論から政府案が出てきたら丸のみします」と宣言したらどうでしょう?何かが決まり、何かが動くのでしょうか?
どれも違うと思うのです。
私は現在の政争とは、別に政治家が無責任であるとか、被災地の心情に冷淡だから起きているものだけだとは思えません。混迷が示しているのは、与野党共に政策を絞りきれない困難であり、その困難とは財源問題という一点に絞られると思います。
その一点とは何か?
それは与野党それぞれが抱える深刻な「ねじれ」です。
まず菅政権の立場ですが、基本的には日本経済の反発力と言いますか、再度の成長路線への回帰を志向していると思います。例えばエネルギー政策に関して言えば、原発へのある程度の依存を続けることをG8でも打ち出しています。いわゆるバラマキ的な支出には慎重ですし、復興計画に関してもビジネス的な観点から「採算性・成長性」を重視しているように見えます。
ところが菅首相の近くには与謝野大臣がいて、増税という原資を強く主張しているわけです。現時点で強く増税を言うというのは、日本経済の現在の支払い能力から原資を出すということであり、基本的には将来への悲観論です。ここに「ねじれ」があるわけです。
やろうとしていることは、リスクを取ってでも成長性を狙う話なのに、財源は現在の日本経済の実力に依存し、そこには将来への悲観論がある、これでは選択のしようがありません。「菅政権では復興はムリ」という批判は、この点では確かに説得力はあります。
ところが、これに対抗する「自公+小沢グループ」は、30兆円のパッケージ提案(復興に20兆+景気に10兆)のように、かなり大胆です。また「政権交代時の公約順守」という流れでバラマキ的な姿勢も残っています。そもそも復興と景気を分ける考え自体、復興計画にどこまで「採算性・成長性」を考えているのかが曖昧です。
エネルギー戦略も、過去の原発推進への責任や一貫性をすっ飛ばして「脱原発」ですが、仮に本気であるのであれば、これは「脱成長性」的な姿勢と理解すべきでしょう。問題は、にもかかわらず財源としての増税に反対し、国債などのファイナンスを考えているということです。返せるストーリーになっていないのに、カネだけ借りてバラマキを続ける、これでは、菅+与謝野路線とちょうど裏返しですが、支離滅裂ということでは同じです。
要は、バラマキや脱成長なら、今の日本経済の実力内で、つまり増税という当座のキャッシュフロー内でやるべきだし、成長へとリスクを取ってやってゆくのなら、堂々と国際市場から資金を調達してやるべきだと思うのです。
例えば、陸前高田のように失うものは何も残っていないところでは、恐らくは後者、投資リターンがプラスになることを中心に自立できる地域経済の再興に進むしかないように思われます。
政争は醜悪ですが、騒動を通じて、なんとか財源問題の「ねじれの解消」へと向かう、それが政策決定のために必要です。
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