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冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ボストンで「愛国」を考える
ボストンには何度か行ったことがあるのですが、今年はたまたま7月4日の独立記念日(ジュライ・フォース)に家族と訪れていて、折角の機会ということで有名な花火大会を見てきました。この独立記念日の花火というのは、私の住んでいるニュージャージーでも各地で開催されますし、フィラデルフィアやニューヨークのものも有名です。ですが、やはりこのボストンのものは、独特の風情がありました。
ボストンは、ここ20年間、この独立記念日に雷雨に襲われたり、寒さをガマンしての花火見物だったり、異常気象に悩まされていたそうなのですが、今年は雲一つない晴天、風もなく雷雨の予報もないということで「ハーフミリオン」つまり50万人が繰り出したといいます。実際に花火が佳境を迎える時間に、会場を横断してみた私たちには本当に信じられないほどの人出を目にすることができました。
それにしても、このボストンを中心とした「ニューイングランド」の人々の気質というのは、知識として知ってはいたのですが、実際に経験してみると様々な驚きがありました。まず、何といっても粘り強いという特質があります。この花火大会が良い例で、打ち上げの佳境は午後10時を回ってからという「宵っ張り」のイベントなのですが、場所取りは朝から始まっていました。チャールズ川の河畔の「一等地」には万が一の雨に備えてテントを張ったり、折りたたみ式のイスを持ち込んだり、丸一日をかけての「長期戦」なのです。
地元のTVでは、この「花火を待つ12時間も楽しみのうち」だと言っていましたが、そうした粘り強い気質がこの「建国ゆかりの地」からアメリカの「国のかたち」に根付いているというのは発見でした。そういえば、現在の黄金時代を迎えるまでのボストンレッドソックスは「バンビーノの呪い」にかかって優勝から遠ざかっていたと言われますが、その呪いの期間は実に「1919年から2003年」までの足かけ85年間という気の遠くなるような長さです。これもそうした気質の反映でしょう。
もう一つは「愛国=ペイトリオリズム」の性格です。今回の花火大会でも、ファントム戦闘機4機が轟音と共に飛来したり、軍人の顕彰があるなど、いわゆる「国家への忠誠」とか「敵に対抗した団結」を象徴するような光景がありました。それが「建国記念の愛国心」ということだったのなら、それは「どんな国にもあるナショナリズム」と何ら変わりはないことになります。
ですが、どうもそれだけではないのです。ボストンを代表するNFLのフットボールチームがペイトリオッツ(愛国者)と名付けられているのは、このペイトリオッツというのが「英国との独立戦争に立ち上がった人々」という意味だからなのです。そして、この独立の英雄の精神は「アメリカ建国の理念」ということにつながってゆきます。ですから、このボストンでは「独立記念日の花火」とは建国の理念を祝うという意味合いもひときわ濃いのです。
今年の場合はオバマ大統領への賛辞も目立ちましたし、ハーバードの黒人教授によるリンカーン大統領の黒人解放への賛歌の朗読といった政治色の強い内容も入っていました。そこには、ある底抜けに楽天的な「アメリカ民主主義」への信頼があり、同時にその理想を実現するための粘り強さが感じられました。上院議員の2議席について、エドワード・ケネディとジョン・ケリーの2人を選出し続けている土地柄ならではというところです。
いわば草の根リベラルの面目躍如というところですが、こうした心情はボストンの地方色だけでなく、アメリカの「国のかたち」の根深いところに継承されている思想だとも言えるでしょう。アメリカと付き合ってゆくと言うことは、このアメリカ独自の「愛国心」を理解し付き合ってゆくということに他なりません。11時という夜更けまで、これでもかと夜空を染め爆音を轟かせる花火と、それを満面の笑みを浮かべて見ている人々を見るに付け、そのことへの思いを新たにしました。
アメリカ独自の「愛国心」に対して、例えば「君主への忠誠」であるとか「緊急避難的な開発独裁への権限集中」などのことを「同じ愛国心」だといってみても、アメリカ人にはまるで理解されないということが1つ、そしてアメリカが例えば今回の経済危機でもそうですが、イザという時に見せる粘り強さを甘く見てはいけないということは、忘れてはならないと思います。
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