プレスリリース

明治学院大学 萩野谷俊平専任講師が面接者を訓練するAI駆動のシステム「アバタートレーニング」を開発 検察や警察、児童相談所へ提供を想定

2023年03月02日(木)10時00分
明治学院大学 萩野谷俊平専任講師(心理学部心理学科)が、本物の子供と同じようにAI(人工知能)が受け答えをするアバターとの模擬面接を通して面接者を訓練するシステム「アバタートレーニング」を開発し、その成果が国際誌Frontiers in Psychologyで発表されました。
アバタートレーニングは、スマートフォンやパソコンで専用のウェブサイトにアクセスして利用できるシステムです。アバターとの面接などすべての手続きが自動化されているため、受講者は時間や場所にかかわらずいつでも訓練を受講できます。上記とは別の実験では、1,000名以上の参加者を対象とした実験を実施し、大規模展開が可能なことも確認されています。
この訓練は、検察や警察、児童相談所などで犯罪被害が疑われる子供の聴取(司法面接など)を担当する職員へ提供されることが想定されています。現在は、被害者に2次被害を与えない適正な面接技術の訓練の一環として、岐阜県警察が職員約750名を対象にアバタートレーニングを実施するなど、実践への応用が進められています。


◆本研究のポイント
・従来人間が行っていた手続き(特に質問の分類)を自動化し、アバターを自動で動作させるAIとして実装した点
・そのアバターを用いた訓練で面接技術が向上する効果を実証的に示した点


◆研究内容
・背景:
子どもへの虐待は、SDGs(Sustainable Development Goals: 国連加盟国が掲げる2030年までの持続可能な開発目標)においてもターゲットの1つとして扱われる世界的な課題であり、日本でも早急に効果的な対策が求められる問題です。
日本では,虐待被害児童などに対して実施する司法面接について厚生労働省、最高検察庁、警察庁の三機関が情報共有と協同を推進する通知(*2015、2018)を発出し、被害児童の負担軽減および供述の信用性確保の観点から、三機関の代表者が聴取を行うケース(協同面接、代表者聴取などと呼ばれる)が増えています。したがって、聴取者には非常に限られた面接回数・時間で信頼できる供述を得ることが今まで以上に求められています。
その一方で、子どもの証言は誘導的な質問によって歪められる傾向があり、オープン質問を主体とした面接で歪みのない証言を得られやすくする面接技術を学ぶ研修が、各地で行われています。しかし、こうした面接技術を身に付けることは容易ではなく、技術の向上と維持のためには集中的な訓練とその後の継続的なスーパーバイズの実施が推奨されています。
また、2018年には児童相談所の児童福祉司を当時の約3,200名から2,000名程度増員することが閣議決定されるなど、子どもへの面接技術を学習する実践家の数は今後も増え続けていくと予想されます。
こうした背景から、集中的な訓練を継続的により多くの受講者へ提供するアプローチとして,日本におけるアバタートレーニングの開発と提供は進められています。

*1 参考ページ: https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji10_00009.html

開発内容の詳細は下記のページをご覧ください。
https://www.shaginoya.com/avatar-training

以下のリンクから、実際のアバター面接の様子が見られます。
https://youtu.be/hb9knAMzrds

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/346577/LL_img_346577_1.png
面接トレーニングの様子

・本研究で得られた結果・知見:
本研究は、AIにより自動で動作するアバターを用いた面接訓練について、受講者の面接技術を向上させる効果を実証的に示しました。

・今後の研究展開および波及効果:
今後は、AIによるアバターの動作をより本物の子供に近づけるとともに、被疑者アバターを用いた取調べの訓練、大人の証人への聴取訓練などへも研究が展開されます。現場での活用はすでに進められており、上記の通り岐阜県警察職員全体(約3,900名*2)の約20%を対象とした大規模訓練が行われています。

*2 参考ページ: https://job.mynavi.jp/24/pc/search/corp71359/outline.html


◆研究者所属・研究者氏名
明治学院大学心理学部心理学科 萩野谷俊平
https://gyoseki.meijigakuin.ac.jp/mguhp/KgApp?resId=S000526


◆掲載誌名・DOI
掲載誌名 :Frontiers in Psychology
DOI :10.3389/fpsyg.2023.1133621
掲載誌URL :
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2023.1133621/full
論文タイトル:
AI Avatar Tells You What Happened: The First Test of Using AI-Operated Children in Simulated Interviews to Train Investigative Interviewers
著者 :
Shumpei Haginoya, Tatsuro Ibe, Shota Yamamoto, Naruyo Yoshimoto, Hazuki Mizushi & Pekka Santtila

研究の構想と設計・第一稿の執筆 :SHとPS
データ収集 :SHとTI
統計解析 :SH
解析結果の解釈、原稿の修正、出版の最終承認:全著者


□■明治学院大学について■□
創設者は"ヘボン式ローマ字"の考案や和英・英和辞書『和英語林集成』の編纂、聖書の日本語訳完成などの業績があるJ.C.ヘボン博士。明治学院の淵源となる「ヘボン塾」が横浜に開かれた1863年を創設年としています。建学の精神である「キリスト教による人格教育」と学問の自由を基礎とし、ヘボン博士が貫いた"Do for Others(他者への貢献)"を教育理念としています。広く教養を培うとともに、各学部学科において専門分野に関する知識・技能および知的応用能力を身につけた人間の育成を目指します。2023年に創立160周年を迎え、2024年には本学初の理系学部「情報数理学部」を設置予定です(仮称・設置構想中)。 https://www.meijigakuin.ac.jp


詳細はこちら
プレスリリース提供元:@Press
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、4月2日の相互関税発動に変更なし

ビジネス

米2月の卸売物価は前月比横ばい、関税措置が今後影響

ワールド

トランプ氏「ロシアの正しい対応に期待」、ウクライナ

ワールド

在日米軍駐留費の負担増、日本に要請の必要=グラス駐
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 8
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 9
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 10
    「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中