Picture Power

【写真特集】人間と野生のジンベイザメの危うい関係

WHALE SHARK PAINS

Photographs by HANNAH REYES MORALES

2022年03月19日(土)15時00分

フィリピン中部セブ島タンアワンで漁師がジンベイザメに餌をやる。大きい個体は全長20メートルにも達し、現存する魚類の中では世界最大だが、性質はおとなしい

<かつてセブ島は、野生のジンベイザメと交流できる世界有数の観光スポットだった>

夜明け前、ローリン・デ・グズマンは小舟で海へこぎ出す。するとジンベイザメの「180」が水面から巨大な口を出した。グズマンは優しく話し掛けて小エビを与え、皮膚の汚れをそぎ取ってやる。

ここフィリピン中部セブ島オスロブの自治体タンアワンは、かつて野生ジンベイザメと交流できる世界有数の観光スポットだった。2019年には50万人が訪れ、観光業が住民の主な収入源だった。

しかし、コロナ禍で観光客は大幅に激減した。需要の回復を信じてグズマンらはなけなしの資金で餌を与え続けるが、ジンベイザメへの餌付け事業を始めた漁師が21年9月、自殺した。

そもそも絶滅危惧種であるこのサメの扱い方は批判の的だった。回遊魚であるのに餌付けして島につなぎ留めたり、繰り返し海面に浮上させることで船などに触れて体に多く傷ができることなどを保護団体は問題視してきた。

それでも「彼らは私の子供」と語るグズマンらとジンベイザメの危うい関係は容易に断ち切れそうにない。

ppsha02.png

夜明けどき、餌となるサクラエビを運ぶ。本来は雑食であるジンベイザメにエビのみを与えることも生態を崩すとして批判されている

ppsha03.png

かつての観光業のにぎわいの痕跡が残るタンアワンの店。コロナ禍により土産物店やレストランは休業を余儀なくされた

ppsha04.png

ジンベイザメへの餌付けを最初に始め、2021年9月に自殺した漁師の祭壇の前に座る妹。遺体は飢餓状態だったという

ppsha05.png

ジンベイザメツアーで得た収入で建てたグズマンの自宅で食事を準備する家族。コロナ禍による困窮を娘の仕送りなどでしのぐ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア、イスラエルAI新興買収へ協議 最大3

ビジネス

ワーナー、パラマウントの最新買収案拒否する公算 来

ワールド

UAE、イエメンから部隊撤収へ 分離派巡りサウジと

ビジネス

養命酒、非公開化巡る米KKRへの優先交渉権失効 筆
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story