Picture Power

【写真特集】コザに漂う、記憶のかけら

BLUE AFFAIR

Photographs by KOSUKE OKAHARA

2021年04月24日(土)14時30分

<米軍基地と共に生きたコザ市は、ベトナム戦争特需に沸き、本土復帰を経て1974年に隣接自治体との合併で消滅した>

沖縄・名護市の新米軍基地建設問題を、写真家の岡原功祐は根深い政治問題の象徴として、主に欧米メディアの視点で撮影を重ねてきた。抗議する市民と、それに対峙する警察官らを繰り返し記録するなかで、ニュースの枠組みだけで沖縄を捉えてきた自分に疑問を膨らませていた。

取材を終え、帰途に就いたある日、岡原は沖縄市の大きなアーケードから続くシャッター街で、今は存在しない「コザ」と出合った。

第2次大戦後、米軍基地と共に生きたコザ市は、ベトナム戦争特需に沸き、本土復帰を経て1974年に隣接自治体との合併で消滅した。70年に米兵が起こした人身事故をきっかけに住民が蜂起した「コザ騒動」から、2020年12月でちょうど50年になる。

岡原は、複雑な歴史や政治問題を背負ってきたこの街で、あえてそれらの文脈から離れ、偶然の出合いを手繰り寄せながら、人々の暮らしの中に没入していった。

「コザでは人間や街の二面性が全て表面に現れているように感じた」と岡原は言う。「優しいけれど暴力的、オープンだがシャイ、ローカル色が強いが、嘉手納基地の隣にあり国際色豊か。二律背反の事象が予測不能に交錯する」

この街に憑かれた岡原は、コザを離れると、撮影した風景が夢となって現れるようになり、何度も戻っては、街により深く沈み込んだ。

混沌の中での息苦しさとは裏腹に、この場にとどまりたいと願う矛盾を抱えながら拾い集めた記憶のかけらは、岡原の熱を帯びた「夢」を体現しつつ、相いれない真逆の性格を同居させている。

<本誌2020年11月24日号掲載>

koza02.jpg


koza03.jpg

「毎日あてもなくさまよい、偶然に任せて写真を撮った。
 それは、海の中に沈んでいく感覚に似ている。
 時として息苦しくなる混沌とした世界。
 酸素が足りなくなってもずっと潜っていたいような、
 そんな矛盾した渇望に支配された。」

koza04.jpg


koza05.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

ロイターネクスト:為替介入はまれな状況でのみ容認=

ビジネス

ECB、適時かつ小幅な利下げ必要=イタリア中銀総裁

ビジネス

トヨタ、米インディアナ工場に14億ドル投資 EV生
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story