Picture Power

自傷する彼女たちが求める居場所

SELF-INJURERS

Photographs by KOSUKE OKAHARA

<ミリ>目の焦点が合わなくなり、「ああ切りたい、切りたい」と言い出し、「ずっと我慢してたんです。ずっと切りたくて仕方なかったんです」と、カッターで太ももを切り始めた。

ある少女は「自分のことを大切にしろと何度も言われたけど、どうしたらそう思えるのかが分からない」と話した。

自傷――リストカットに代表される、自らの体を傷つける行為で、習慣化することも多い。耐え難い記憶や感情といった精神的な苦痛を、身体的な苦痛に置き換えることで一時的に緩和できるからだと言われる。

写真家の岡原功祐が自傷の取材を始めたのは14年前。こうした行為を行う人に共通していたのは自尊心を失い、自己否定を繰り返して内に籠もり、自身の価値を認められずに苦しんでいるように見えることだった。

岡原のフォト・ドキュメンタリーブック『Ibasho 自傷する少女たち"存在の証明"』は、自らを傷つけずには生きられない女性たちを追った記録だ。写真で自らの姿を客観的に見ることにより、自分は何ものにも代え難い大切な存在だと理解してほしいと岡原は考えている。

ここで紹介するのはその一部。現在、彼女らは精神的な落ち着きを取り戻して自傷から抜け出している。その1人、ゆかは本を受け取ると、「どんな人でも抜け出せるというメッセージになったらいいな」と話した。


<撮影:岡原功祐>
1980年東京都出身。「人の居場所」を主なテーマにした作品を国内外の主要メディア、美術館、ギャラリーなどで発表している。本作は新著『Ibasyo 自傷する少女たち"存在の証明"』(工作舎刊)からの抜粋。現在、東京・京橋「72Gallery」で岡原功祐展「Ibasyo 自傷する少女たち"存在の証明"」開催中〜7月1日まで。

≪リンク≫
新著『Ibasyo 自傷する少女たち"存在の証明"』(工作舎刊)
岡原功祐

Photographs by Kosuke Okahara

<本誌2018年4月24日号掲載>



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