Picture Power

「崩壊した街」に残る住民のリアル

UNBROKEN DOWN

Photographs by DAVE JORDANO

「崩壊した街」に残る住民のリアル

UNBROKEN DOWN

Photographs by DAVE JORDANO

広報活動の一環として、公開訓練を実施するデトロイト警官学校の実習生。彼らの代が最後の卒業生になる見通しだ

 デトロイトはかつて、アメリカ自動車産業の中心地として輝かしい発展を遂げた都市だ。しかし産業の衰退とともに街の活力は失われ、2013年に財政破綻に陥った。

 現在では高い失業率や貧困、犯罪件数の多さが街の「名物」になっている。ニュースでの扱いも、街のネガティブな面ばかりが強調されることが多い。切り取られるイメージは大抵、崩れかかった工場や空き地だらけの街並み、火事で燃え尽きた家々、廃墟と化した商業施設......そんなところだ。

 写真家のデーブ・ジョルダーノは、そんなデトロイトで生まれた。彼はこうした一面的な報道では見えない故郷の本当の姿を伝えるため、街に残った住民のリアルな生活を被写体に定めた。人口が減って公共サービスが不足するこの街で暮らす住民たちのたくましさは、デトロイトについて回る「死んだ街」「崩壊した街」という文脈では語られることのないものだ。

 アメリカで最も美しく、繁栄した都市と呼ばれた栄光は失われた。だが、ジョルダーノの写真から見えてくるのは都市の崩壊ではなく、困難に立ち向かう住民の強さと勇気だ。


撮影:デーブ・ジョルダーノ
デトロイトの大学で写真を学び、1977年にシカゴで写真スタジオを開設。ネスレ、任天堂など大企業の広告写真を撮影する。また、ファインアートの写真家としてアメリカ、ロシア、ベルギーなどのギャラリー、美術館で作品を発表している。本作は新刊写真集『デトロイト・アンブロークン・ダウン』(米パワーハウス・ブックス社刊)からの抜粋

Photographs from "Detroit Unbroken Down" (powerHouse Books) by Dave Jordano

<本誌2015年12月15日号掲載>



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2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

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