Picture Power

世界報道写真コンテスト 「シグナル」が大賞に

2014 World Press Photo Contest

Photographs by Courtesy of World Press Photo

世界報道写真コンテスト 「シグナル」が大賞に

2014 World Press Photo Contest

Photographs by Courtesy of World Press Photo

大賞:「シグナル」ジプチの海岸で、家族と連絡を取るために隣国ソマリアからの安い電波を捉えようと携帯電話を掲げるアフリカの移民たち。ジプチは、ソマリア、エチオピア、エリトリアなどの国々からより良い生活を求めて欧州や中東を目指す移民たちの中継点になっている。(ジプチ市、ジプチ 2013年2月26日)John Stanmeyer, USA, VII for National Geographic

 先ごろ、世界報道写真(World Press Photo)財団(本部・オランダ)から第57回世界報道写真コンテストの各賞が発表になった。大賞は、月の輝くジプチの海岸で家族と連絡を取るために、安い電波を捉えようと携帯電話を掲げるアフリカの移民たちを写したアメリカのジョン・スタンマイヤーが受賞した。毎年行われる世界最大級の報道写真コンテストには、132カ国のプロ写真家5.754人から98,671点の作品が寄せられていた。

 大賞の審査では、今年は特にバラエティに富んだ作品が並ぶことになった各部門賞の中から、9名の審査員によって財団が定めた規定に則り選出された大賞候補の作品が、目の前の大きなスクリーンに1点ずつゆっくりと映し出される。その課程で、静かながらもパワフルで美しい写真「シグナル」は、他の候補作にも増していくつものストーリーを次々と語りかけてきた。移民、貧困、グローバリゼーション、テクノロジー、家族愛、郷愁ーー審査員たちの熱のこもったディスカッションは止まらぬまま最終投票まで進み、大賞に決まっていった。たとえ、この写真が撮影されたジプチから遠く離れた土地で暮らしていても、見る者は自らの生活や経験に照らして写真から多くのメッセージを受け取るだろう。

 今年のコンテストから、各部門賞を決める前段階で、応募写真の未加工データを写真家に求め、独立した立場の専門家によって画像加工の技術的チェックが行われ、審査員によって「マニュピレーション」と呼ばれる過度の画像操作にあたるか否かの判断がなされた。昨年の大賞作に「マニュピレーション」があったのではないかという疑問が投げかけられた(財団は正式に否定)ことがきっかけとなり、より公正を期すために新しく採用されたルールだ。結果は、データが解析されたうちの8%にあたる10作品が失格となっている。

編集部ーー片岡英子(世界報道写真コンテスト2014/2010審査員)

関連リンク:
世界報道写真(World Press Photo)財団
関連記事:
世界報道写真コンテスト 「ガザの葬列」が大賞に
世界報道写真コンテスト 大賞は「アラブの春」から
世界報道写真コンテスト 大賞は「鼻と耳を削がれた女性」
世界報道写真大賞を狙え---コンテスト直前ゼミ
世界報道写真コンテスト 「抗議の叫び」が大賞に
世界報道写真コンテスト:審査の裏側

MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中