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Vol.3 神戸大学経営学研究科教授 尾崎弘之さん
次世代エコカーが日本の環境ビジネスを牽引する
──自動車が急速に普及しつつある新興諸国でも、日本のエコカー技術に対する注目度が増しています。
大変な勢いでモータリゼーションが進む中国は、自動車の排気ガスなどの影響で大気汚染が深刻です。このままでは社会の持続可能性に関わるので、排気ガスや燃費規制が強化されるのは必至でしょう。同じことはインド、ASEAN諸国などにもいえると思います。そうした新興国では安価なガソリン車が主流ですが、いずれ購買力が増せば、当然国民の関心は環境対応型の車に向いていくはずです。
──日本が世界に環境ビジネスを展開していく中で、PHVは大きな役割を果たすと考えられますか。
PHVの開発には欧州の自動車メーカーも力を入れていますが、プリウスなどで実績のある日本メーカーの技術的な優位性は高いと思っています。半導体や蓄電池などの製品はコモディティ化したために、残念ながら日本企業が優位性を失ってしまいましたが、自動車は状況が違います。エンジンや制御システムをブラックボックス化したまま、周辺技術だけを移転すれば、新興国も簡単にマネすることはできません。「PHVのこの部分は日本のメーカーにしかつくれない」というかたちで、将来エコカー需要が爆発的に伸びると思わる新興諸国を環境ビジネスのターゲットとすることは、日本経済にとって極めて重要な戦略でしょうね。
──欧米諸国における次世代エコカーの広がりはどうなのでしょうか。
伝統的にディーゼル車が多い欧州では、ディーゼルのPHVが普及する可能性があり、ドイツなどのメーカーが強力な競争相手となるでしょう。一方、政策的にガソリン価格を比較的安くしているアメリカでは、あまりエコカーへの関心が高いとはいえません。ただし、排ガス規制の厳しいカリフォルニア州などでは、プリウスが普及しています。今後世界各国(地域)の環境規制は総じて厳しくなる方向性なので、アメリカでもHVだけではなくPHVの存在感が強まっていくはずだと思います。
※1 国土交通省(運輸部門における二酸化炭素排出量の推移)
※2 日本自動車工業会調べ