本当のゴールは、第八十八番札所ではなく、和歌山の高… 2016.01.29
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本当のゴールは、第八十八番札所ではなく、和歌山の高野山だった
大窪寺にしかない宝杖堂には、八十八カ所を巡ったお遍路さんたちの金剛杖が奉納されており、独特の光景を作り出している。年に2回「お焚き上げ」が行われるのだが、それにもかかわらず溢れんばかりの金剛杖が収められているのを見ると、お遍路さんの人数の多さに改めて驚かされる。
大窪寺のすぐ目の前には、「八十八庵」という、ゴールしたお遍路さんなら誰もが食べると言われるほど人気の讃岐うどん屋がある。ご飯どきには数十メートルもの行列ができることもあるので、行くなら早めの時間帯に行くことをオススメしたい。
そこで知り合ったお遍路さんが貴重な話を聞かせてくれた。その人は8周目のお遍路だったが、道中、何度か一緒になった日本人の若者グループが、会うたびに活力が満ちていったのが見ていてわかったというのだ。
その若者たちは、会社や学校になじめず、引きこもったり自暴自棄になったりして、一度社会から距離を置くためにお遍路に来たのだという。最初は挨拶すら返してくれなかった彼らが、お遍路が進んで偶然会うたびに明るくなっていき、向こうから挨拶をしてきて、いろいろな話を聞かせてくれるようにまでなった。そんな様子を目の当たりにして、感動し、改めてお遍路の力を実感したのだとその人は言った。
さて、うどんで満腹になり、「これでお遍路の旅も終わり」「長いようであっという間の1週間でしたね」などとFさんと話していると、ここで驚きの事実が発覚した。
実はお遍路は、これで終わりではなく、八十八カ所を無事にお参りしてきたという報告を弘法大師にする必要があるというのである。しかもその場所、四国を出て瀬戸内海を越え、和歌山県の高野山まで行くというのだ!
四国の旅だと思っていたのに......と、あまりの展開に驚きつつも、なぜか少し嬉しさも感じた。Fさんも同じ気持ちだったようで、がっちり握手をして、いざ本当のゴールである高野山へとバスで向かう。
淡路島から明石海峡大橋を経て、瀬戸内海を渡り本州の神戸へ。そこからさらに大阪などを通過して、真っ直ぐに高野山を目指す。
高野山に着く頃にはすっかり日も暮れていた。ライトアップされて幻想的な大門が出迎えてくれる。
この日は、福智院という宿坊に泊まることになった。ここは高野山の宿坊の中で唯一天然温泉が出ている宿。冷えた体を温め、翌日の朝のお勤めに備えて早めの就寝についた。