最新記事
シリーズ日本再発見

日本の夏を席巻する「マスカット」フレーバー

2022年07月08日(金)10時15分
西田嘉孝
シャインマスカット

巨峰を抜いたシャインマスカット kazoka30-iStock.

<いつしか日本人にとって国民的フルーツとなったマスカット。今やあらゆる菓子類やスイーツなどの世界に「マスカットフレーバー」の波が押し寄せている>

エジプトなどを中心に紀元前から栽培され、古くはかのクレオパトラも愛したというマスカット。日本には明治時代に導入されるも、雨が多く湿度が高い日本では決して育てやすいブドウではなかった。

そんなマスカットに特有の香味や欧州ブドウの特徴である噛みごたえなどはそのままに、米国ブドウと交配させることで日本での栽培に適した品種に改良したものがシャインマスカットだ。

農業や食品産業に関する日本最大の研究機関である農研機構の果樹茶業研究部門が約30年をかけて開発し、2006年に品種登録。病気に強く育てやすいうえ、皮ごと食せる種なしでの栽培も可能。そして何より、高貴で爽やかな「マスカット香」やクセのない甘さが評判を呼び、全国でじわじわと人気を高めてきた。

ブドウの収穫量が全国ナンバーワンの山梨県では、長らく出荷量トップに君臨してきた巨峰を2020年に逆転。シャインマスカットが全品種のうち約38%を占め県内トップの出荷量となるなど、この新品種の登場によって、マスカットは今や「国民的フルーツ」の地位を得ている。

japan202207-5b.jpg

マスカット味の食べ物や飲み物の一例 Newsweek Japan

スーパーや青果店で多くの人がマスカットを手に取る光景が当たり前になり、グミやチョコレートなどのお菓子やジュースでもマスカット味が定番になった。

さらに昨夏には、マクドナルドの「マックシェイク マスカットアレキサンドリア」やドトールの「マスカットヨーグルン ~長野県産シャインマスカット~」、タリーズの「マスカットスプラッシュ グランデ」にミニストップの「シャインマスカットソフト」......と、期間限定のマスカットフレーバー商品も続々と発売されている。

では、マスカットはなぜそれほど人気なのだろうか。

筆者の周囲にいるマスカット好きな人たちに聞くと、「爽やかで口当たりがいいから、どんな気分のときでも選びたくなる。特に夏場は定番で、冷蔵庫にないと落ち着かない」(会社員40代男性)、「単純に美味しいから好き。皮ごと食べられるのでポリフェノールも摂れるし、そのままスムージーにできるのも便利」(自営業30代女性)などと、その理由を教えてくれた。

加熱式たばこにも「マスカットフレーバー」が登場

今年の夏も加熱しそうなマスカット人気。実はその波は、たばこの世界にも押し寄せている。

広がり続ける消費者の多様な嗜好に対応するため、各メーカーがさまざまなフレーバーを開発・発売しているのが近年のたばこ業界の状況だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、1カ月半内にサウジ訪問か 1兆ドルの対

ビジネス

デフレ判断の指標全てプラスに、金融政策は日銀に委ね

ワールド

米、途上国の石炭からのエネルギー移行支援枠組みから

ビジネス

トランプ氏、NATO加盟国「防衛しない」 国防費不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中