最新記事
シリーズ日本再発見

強制収容所に入れられた日系アメリカ人の苦難をゲームで学ぶ

Becoming a Virtual Prisoner

2020年09月30日(水)15時40分
フィリップ・マルティネス

『プリズナー・イン・マイ・ホームランド』のワンシーン COURTESY OF THIRTEEN PRODUCTIONS LLC

<プレイヤーはアメリカ人として戦争に協力するか、不当な扱いに抗議するかといった選択を迫られる>

「ミッションUS」シリーズは、PBS(公共テレビ放送網)が提供する無料のインタラクティブ歴史教材。黒人奴隷やアメリカ先住民、ユダヤ人移民など、アメリカ史における難しい問題を、ロールプレイングゲームの形で10代の子供たちに「体験学習」してもらう試みだ。

この9月公開のシリーズ最新作『プリズナー・イン・マイ・ホームランド』は、16歳のヘンリー・タナカの目を通して、第2次大戦中の日系アメリカ人の苦難を紹介する。

真珠湾攻撃によって太平洋戦争が始まると、多くの日系アメリカ人はそれまで住んでいた家から立ち退きを命じられ、強制収容所での生活を強いられた。ワシントン州のベインブリッジ島に暮らしていたタナカの家族も、カリフォルニア州に造られたマンザナー収容所に送られた。

プレーヤーはタナカとなって、その過程を経験すると同時に日系人コミュニティーを助けるか、家族の生き残りに全力を注ぐか、アメリカ人として戦争に協力するか、不当な扱いに抗議するかといった選択を迫られる。

収容所生活を若い世代が知る機会に

ゲーム制作に当たっては、日系アメリカ人コミュニティーから大きな協力を得たという。またコンテンツ開発と教員向け資料は、日系人強制収容に関する1次資料を集めたデジタルアーカイブ「デンショウ(伝承)」をベースにしている。

「『プリズナー』は、日系アメリカ人の収容所生活がどのようなものだったかを、若い世代が知ることができる画期的かつクリエーティブなツールだ」と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)アジア系アメリカ人研究センター(AASC)で、日系人強制収容の資料を研究するマーサ・ナカガワは言う。

コロナ禍で中学校や高校でもオンライン授業が広がるなか、「ミッションUS」シリーズのように、現代の子供たちが異なる時代の子供の立場に立って歴史を考えることを可能にするゲームは、ますます増えていくかもしれない。

<本誌2020年9月22日号掲載>

<関連記事:米出版界を震撼させる楳図かずおの傑作ホラー『漂流教室』
<関連記事:『ゴースト・オブ・ツシマ』でサムライ映画の世界を戦い抜け

japan_banner500-season2.jpg

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

原油先物、週間で4カ月半ぶり下落率に トランプ関税

ビジネス

クシュタール、米当局の買収承認得るための道筋をセブ

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた

ワールド

トルコ中銀が2.5%利下げ、インフレ鈍化で 先行き
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 5
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 6
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中