最新記事
シリーズ日本再発見

良くないと分かっているが......という人に「ハームリダクション的」な商品を

2019年02月26日(火)11時00分
高野智宏

これまでも、少量のニコチンを体内に入れ、徐々にニコチンからの離脱を図るニコチンパッチやニコチンガムなどのハームリダクション的な商品はあったが、最近は加熱式たばこを活用する「たばこハームリダクション」という考え方が注目されている。

japan190226harm-3.jpg

(左から)glo、新製品のPloom TECH +、IQOS 3の加熱式たばこ3製品 From Left: Kim Kyung-Hoon-REUTERS; Taiga Uranaka-REUTERS; Kim Kyung-Hoon-REUTERS

なぜ、タバコ葉を熱し、ニコチンを含んだ蒸気を発生させる加熱式たばこが、ハームリダクション的になるのか。少し長くなるが、説明が必要だろう。

「ニコチンの問題は依存性です。健康被害をもたらすのは燃焼することで発生する煙に含まれるその他の成分。しかしそれらの成分は、熱するだけで燃焼はさせない加熱式たばこでは9割以上減っているとされています」と、加熱式たばこを用いたたばこハームリダクションの有用性を語るのは、川崎市のAOI国際病院副院長兼健康管理センター長を務める熊丸裕也氏。

熊丸氏の言うとおり、人体に悪影響を及ぼす有害物質(健康懸念物質)は、紙巻きたばこが燃焼することで発生するタールを起因としたものだ。この有害物質が、IQOSやgloでは90%以上、Ploom Tech、Ploom Tech+にいたっては、99%がカットされるという。

「もちろん、スパッと禁煙できるのが最善策。でも、どうしても禁煙できないという人が少なからず存在する。ならば、有害物質が多く副流煙で他者にも健康被害を及ぼしてしまう紙巻きたばこよりも、リスクの少ない加熱式たばこに置き換えるという現実的な選択肢があってしかるべき。患者の健康状態改善を目的とする医師ならばなおさらです」

日本の医学界で熊丸氏のこうした考え方は主流ではないが、加熱式たばこによるたばこハームリダクションを推奨するようになった背景には、熊丸氏自身が直面してきた厳しい現実があった。

「5年ほど前まで別の病院で禁煙治療を行っていたのですが、3カ月で5回通院するプログラムを完遂できたのは約6割。全国平均で5割未満です。しかし、問題はその先。治療を完遂しても1年後に禁煙を続けている人は6割の半分、3割です。禁煙を継続するのは、それほど困難なことなのです」

イギリスでは国が電子たばこによるハームリダクションを推奨

そうした現実を直視し、いち早く対策を講じた国がある。加熱式たばこではなく、電子たばこが主流となっているイギリスだ。ちなみに電子たばことは、タバコ葉を熱する加熱式とは異なり、ニコチンを含む液体を加熱して発生した蒸気を喫する、VapeやE-Vaperと呼ばれるものだ(日本では薬事法によりニコチン入りの電子たばこを販売できない)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

スイス政府、米関税引き下げを誤公表 政府ウェブサイ

ビジネス

EXCLUSIVE-ECB、銀行資本要件の簡素化提

ワールド

米雇用統計とCPI、予定通り1月9日・13日発表へ

ワールド

豪が16歳未満のSNS禁止措置施行、世界初 ユーチ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中