最新記事
シリーズ日本再発見

スペイン人が解き明かした、長寿大国ニッポンの秘密

2017年09月29日(金)20時15分
齋藤慎子 ※編集・企画:トランネット

写真はイメージです MASARU UEDA-iStock.

<長寿大国ニッポンの不思議に魅せられたスペイン人ふたりが著した『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』。沖縄の長寿の里でインタビューし、本や資料を読み漁ってたどり着いたその秘密とは>

厚生労働省によれば、日本は人口10万人当たりの自殺者数が世界でワースト6位、女性に限るとワースト3位になる。若い世代(15〜39歳)の死因のトップが自殺であるのも、先進国では異例だという。

その一方で、肥満率の低さや、健康で幸せな長寿大国として世界的に知られているのも事実だ。やはり、不思議の国ニッポンである。

後者の不思議を解き明かそうと、ふたりのスペイン人著者が著したのが、新刊『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』(筆者訳、エクスナレッジ)だ。

著者のひとりであるエクトル・ガルシアは、2004年から東京に住んでいる自称オタク。彼が日本のポップカルチャーを主として紹介している「kirai」は、スペイン語による日本紹介ブログとして根強い人気があり、書籍化もされ、日本語にも翻訳されている(『コモエスタ・ニッポン! 世界で最も読まれているスペイン語ブログのひとつは日本ガイドだった』宝島社)。

一方、共著者のフランセスク・ミラージェスは、バルセロナに住むジャーナリスト/ライター。スペインの主要紙エル・パイスの別冊『エル・パイス・セマナル』誌に心理学系記事を寄稿しているほか、日本の精神文化を取り入れた自己啓発書や小説など、多数の著書がある。

そんなふたりが本や資料を読み漁り、長寿者率が世界一で「長寿の里」として知られる沖縄県大宜味(おおぎみ)村まで出かけていって、村の高齢者にインタビューを行った。そうしてたどり着いた「長寿ニッポン幸せの秘密」は――地元の産物や清水が流れる自然環境などよりむしろ――「生きがい」だった。

この日本語をスペイン語の原書でもそのまま、不思議なことば Ikigaiとして紹介。「人生を通して自分を導き、美しいものや役立つものを地域社会や自分自身のために生み出そうと思わせる、積極的な心構え」であり、「生きていくためのエネルギー」だと説明している。

本書には、自殺することなく前を向いて生きていくべき理由(すなわち、人生の意味)を探求するよう促す「ロゴセラピー」や、生きる目的を見つける手助けをする「森田療法」などが紹介されているが、これらも要するに「生きがい」探しを手助けするものだという。

わび・さびから諸行無常、レジリエンスまで

両著者は、侘(わび)・寂(さび)、一期一会、簡素美、諸行無常といった非常に日本的な概念を、日本文化をよく知らない読者にわかりやすく説明しながら、「生きがい」に収束させている。

さらに、マインドフルネス、フロー、レジリエンス、アンチフラジャイルなど、いま話題の概念も、(盛り込みすぎたきらいはあるが)すべて「生きがい」へとつながっていく。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、一部の米提案は受け入れ 協議継続意向=

ワールド

韓国検察、尹前大統領の妻に懲役15年求刑

ビジネス

英サービスPMI、11月は51.3に低下 予算案控

ワールド

アングル:内戦下のスーダンで相次ぐ病院襲撃、生き延
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 7
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 8
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中