最新記事
シリーズ日本再発見

スペイン人が解き明かした、長寿大国ニッポンの秘密

2017年09月29日(金)20時15分
齋藤慎子 ※編集・企画:トランネット

「長寿の里」大宜味村で100人を超える高齢者を対象に行われたインタビューで得られた、シンプルで味わいのある言葉に触れられるのが特にいい。当たり前のことを当たり前にたゆまず続けること、感謝と笑顔で人生を楽しむことの大切さを再認識させられる。

回答の一部はそのまま紹介されているほか、「『生きがい』十戒」として本書のおわりにまとめられている。ここで簡潔に紹介しておこう。

●「生きがい」十戒

1.すっかり隠退してしまわず、常に活動的でいる。
2.穏やかに生活する。
3.満腹になるまで食べない。
4.よき友人に囲まれる。
5.次の誕生日までに体調を整える。
6.微笑む。
7.自然に還る。
8.感謝する。
9.「いまこのとき」を生きる。
10.自分の「生きがい」に従う。

印象的なセンテンスを対訳で読む

以下は、『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』の原書と邦訳からそれぞれ抜粋した。

●Los japoneses son buenos uniendo naturaleza con tecnología; no es el hombre contra la naturaleza, sino la unión de ambos.
(日本人が自然とテクノロジーを一体化させるのが得意なのは、人と自然が対峙するのではなく、結びついているからだ)

――日本の職人技を説明している箇所。仕事に没頭してフロー状態に入り、作業対象と一体化することに特別な側面があるのは、神道では森にも木にもモノにも「カミ」(霊、神)が宿っているから、と論じている。「対象に命を吹き込む」べく、自然を常に敬いながらも上手に活用することが、ものを作り出す人間の責任だという。

●La comida no alarga la vida, el secreto es sonreír y pasarlo bien.
(食事で寿命が延びるわけじゃないのよ。長生きの秘訣は、笑顔で人生を楽しむこと)

――大宜味村で著者ふたりを食事に連れて行ったユキコさん(88歳)のことば。このようなことばがほかにもいろいろ紹介されている。

●La vida es pura imperfección, como reza el wabi-sabi, y el paso del tiempo nos demuestra que todo es efímero, pero si tienes un ikigai definido, cada momento albergará tantas posibilidades que es como una eternidad.
(「侘・寂」のことばどおり、人生は不完全そのものであり、時の流れは諸行無常を示している。それでも、はっきりした「生きがい」があれば、どの瞬間にも多くの可能性があり、永遠とも言える)

――すべての逆境には成長の可能性が潜んでいる。打撃を受けるたびに強くなる方法を見出せるはず。要するに、打撃を不運ととらえるか、「いい経験」ととらえるかの違いだという。

◇ ◇ ◇

逆境も成長の機会ととらえ、前を向いて生きていくための、あなたの「生きがい」は何だろうか。


『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』
 エクトル・ガルシア、フランセスク・ミラージェス 著
 齋藤慎子 訳
 エクスナレッジ

※当記事は2017年7月27日にアップした記事の再掲載です。

トランネット
出版翻訳専門の翻訳会社。2000年設立。年間150~200タイトルの書籍を翻訳する。多くの国内出版社の協力のもと、翻訳者に広く出版翻訳のチャンスを提供するための出版翻訳オーディションを開催。出版社・編集者には、海外出版社・エージェントとのネットワークを活かした翻訳出版企画、および実力ある翻訳者を紹介する。近年は日本の書籍を海外で出版するためのサポートサービスにも力を入れている。
http://www.trannet.co.jp/

japan_banner500-season2.jpg

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

-日産、11日の取締役会で内田社長の退任案を協議=

ビジネス

デフレ判断指標プラス「明るい兆し」、金融政策日銀に

ビジネス

FRB、夏まで忍耐必要も 米経済に不透明感=アトラ

ワールド

トルコ、ウクライナで平和維持活動なら貢献可能=国防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中