最新記事
シリーズ日本再発見

なぜ日本の街にはゴミ箱や灰皿が少ないのか

2017年03月24日(金)16時13分
高野智宏

<判定場所①:喫煙所と非喫煙所との境界線>
1:デジタル粉じん計を用い、経時的に浮遊粉じんの濃度の変化を測定し漏れ状態を確認する(非喫煙場所の粉じん濃度が喫煙により増加しないこと)。
2:非喫煙場所から喫煙場所方向に一定の空気の流れ(0.2m/s以上)があること。

<判定場所②:喫煙所>
1:デジタル粉じん計を用い、時間平均浮遊粉じん濃度が0.15mg/立方メートル以下であること。
2:検知管を用いて測定した一酸化炭素濃度が10ppm以下であること。

しかし、そんな判定基準に疑問を投げかける、興味深い実験結果がある。2014年、工学院大学先進工学部環境化学科の並木則和教授(工学博士)が行った「低境界風速条件における空間分煙効果に関する研究」だ。これは、上記の判定場所①の2に記された「0.2m/s以上の空気の流れ」に着目した実証実験である。

「重要なのは粉じん濃度であり、0.2m/s(という空気の流れ)を確保できない店舗でも、喫煙空間内の粉じん濃度にも着目しつつ、0.2m/sよりも低い風速で、非喫煙空間への煙の漏れを防ぐことはできないのかという疑問が実験のはじまりです」と、並木教授はそのいきさつを語る。

ちなみに、0.15mg/立方メートルの粉じん濃度とは「喫煙空間内の煙が薄らいだレベルであり、また、その状態で喫煙空間内の一酸化炭素濃度が平均値で10ppmを上回ることはまずないでしょう」と、並木教授は言う。

実験の方法はこうだ。ルーバー(羽板)による下開口を設けたスライド式ドアで仕切られた、業務用の排気装置を備えた36平方メートルの喫煙空間に3カ所で計12本の喫煙環境を再現。さらに、より現実的な環境を再現するため、喫煙者や店員を想定したマネキンが喫煙空間と隣接する非喫煙空間への出入りを繰り返した場合の、喫煙空間及び非喫煙空間における「浮遊粉じん濃度」を調査した。

「結果として、ドアの開放時に流れ込む外気の風速が0.15m/sであっても非喫煙空間への煙の漏れを防ぐことができ、喫煙空間の粉じん濃度も時間平均で0.15mg/立方メートル以下となることが立証されました。喫煙人数が増加する可能性もありますが、12人が同時に喫煙する状況もそうはない。結構、高負荷な状況下での実験であり、一定の分煙効果が証明されたのではないかと思います」

厚労省の判定基準が、すべての条件ではなく、もっとも重要な「時間平均浮遊粉じんの濃度が0.15mg/立方メートル以下」だけを満たせばよいとなれば、話は変わってくる。0.2m/s以上の境界風速を確保できない個人経営などの小規模店舗にとって、設備投資のコスト削減につながるだろう。

【参考記事】日本から喫煙できる飲食店がなくなる――かもしれない?

世界で認められた清潔さと、それを維持できるモラルの高さ。受動喫煙対策を進めていく上での、現実的な対応。東京オリンピック開催前に「世界最低」の評価から脱却するために、日本はいま何をすべきだろうか。

japan_banner500-9.jpg

japan_banner500-8.jpg

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

現代自動車、中国販売倍増へ 北米で36車種投入計画

ビジネス

午前のドルは159円半ばで底堅い、上攻めの手掛かり

ワールド

米の対台湾武器売却、計画通り進展 国防部長が表明

ワールド

トランプ氏、5月14─15日に訪中 「歴史的な訪問
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 2
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「日本産ミュージカルの夢」に賭ける理由【独占インタビュー】
  • 3
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 4
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 5
    「有事の金」が下がる逆説 イラン戦争で市場に何が…
  • 6
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 7
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 8
    地上侵攻もありえる...イラン戦争が今後たどり得る「…
  • 9
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 10
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 3
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 9
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中