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和食ブームだけじゃない、日本の料理教室がアジアで快進撃の理由

2016年07月06日(水)16時53分
西山 亨
和食ブームだけじゃない、日本の料理教室がアジアで快進撃の理由

写真提供:ABCクッキングスタジオ

<30年以上にわたり料理教室を展開しているABCクッキングスタジオ。この6年で海外での教室運営も好調に推移してきたが、そのひとつのカギは「信頼関係」にある。そして同社の海外事業は、日本の食材会社や自治体、生産者からも熱いオファーを受けていた> (写真は、2016年4月に関西で開催された、食と農をテーマとしたグリーンツーリズム・ツアーの様子。香港のABCクッキングスタジオ会員が日本を訪れ、最終日には京野菜を使った料理作りを学んだ)

 日本を訪れる外国人旅行者の増加に伴い、彼らの関心はモノからコトに移りつつある。中国人観光客による「爆買い」は鳴りを潜め、例えば日本で美食に舌鼓を打つといったことが訪日の大きな目的になっているわけだ。そんな日本の食文化に、料理教室というビジネスで深く関わってきたのが、1985年創業のABCクッキングスタジオである。

【参考記事】「爆買い」なき中国ビジネスでいちばん大切なこと

 少人数制、ガラス張りのオープンスタイルのスタジオなど、一般的な料理教室の概念を打ち破り、多くの女性の支持を集めてきた。日本全国に130カ所以上、海外に16のスタジオを展開し、約30万人の会員を抱える(うち海外の会員は約2.5万人)。

 海外進出は2010年の中国・上海への出店を皮切りにスタートした。今では、中国、香港、台湾、韓国、シンガポール、タイという6つの国と地域の8都市に展開するまでに成長している。

日本の家庭料理を現地採用の講師が教える

「世界中に笑顔のあふれる食卓を」を企業理念とするABCクッキングスタジオは、かねてから海外進出の機会をうかがっていた。そんな折、2010年に上海万博(上海国際博覧会)が開催されることになり、彼の地が海外1号店の出店地に決まった。

 広報の坂尾友希さんは、「この万博をきっかけに、上海の人たちはさまざまな日本文化に触れることになるだろう。モノだけでなくサービスにも価値を見いだし、消費行動が変わるこのタイミングでの海外進出が有効ではないかと考えたのです」と、当時を振り返る。

 実際、上海万博の開催をきっかけに日本の外食産業が次々と進出。外食で日本の食に魅了された人たちは、自分でも作ってみたいと思い、手作りの楽しさや大切さを伝える料理教室というサービスにも興味を持つようになった。

【参考記事】 NY著名フレンチシェフが休業、日本に和食を学びに来る!
【参考記事】ユネスコの自然文化遺産登録で「和食」の世界は広がるのか?

 同社が海外で展開している事業は、国や地域によって若干の違いはあるものの、基本は日本国内の事業と変わらない。日本と同様に、クッキング、ブレッド、ケーキの各コースがある。例えばクッキングコースで教えるのは、刺身や天ぷらに代表される伝統的な和食だけでなく、肉じゃがや生姜焼きといった家庭料理もあれば、洋食もあり、より身近な日本の食を習うことを目的としている。通っている人たちは20~30代の働いている女性が中心で、比較的裕福な層が多いという。

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