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戦前は「朝鮮人好き」だった日本が「嫌韓」になった理由
Illustration by Kinberry Wood/Getty Images, SNDR/Getty Images (INSET)
<「韓国が悪い、文在寅が悪い」だけが理由なのか。単なる韓国批判を超えた「行き過ぎた」言説が広がる背景を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かす>
最近、リベラルを自認する友人から戸惑い気味にこう吐露された。「さすがに自分も、最近の韓国はないなって思うようになっちゃった......」
こう思っているのは、おそらく彼だけではない。
今年5月~6月にかけて日本の非営利組織「言論NPO」が実施した世論調査によれば、韓国に対して「良い印象を持っている」という人は20%、「良くない印象を持っている」は49.9%。日韓関係が「戦後最悪」と言われるなか、回答者の約半数が悪印象を持ち、日本では「韓国が嫌い」、いわゆる「嫌韓(けんかん)」と呼ばれる現象が目に付くようになった。
「嫌韓」を主張する雑誌や書籍が売れる。ワイドショーが韓国の「反日」を伝え、コメンテーターが怒りのコメントをぶちまける。インターネットには嫌韓コメントが溢れかえる......。「嫌韓」は、よりありふれた光景になりつつある。
文在寅政権の対日外交や国民主体の「反日」デモなど、「相手側」の責任を指摘する声は多い。だが、週刊ポスト誌が「韓国なんて要らない」という特集を掲載して謝罪に追い込まれたように、単なる韓国批判を超えた「行き過ぎた」言説がそこかしこにあふれ出ているのは、なぜなのだろうか。そこには、何か別の要因もあるのではないか。
本誌は10月15日号(10月8日発売)の「嫌韓の心理学」特集で、日韓どちらの責任かという論点とは別の側面から、この「嫌韓現象」を解き明かそうと試みた。
3本の記事から構成される本特集のうち、1本目の「心理学で解く『嫌韓』のメカニズム」は、TBSラジオ『荻上チキSession-22』でパーソナリティーを務める評論家・荻上チキ氏と、著書に『レイシズムを解剖する 在日コリアンへの偏見とインターネット』(勁草書房)がある社会心理学者・高史明(たか・ふみあき)氏が共同執筆。「誰が、どのようにして嫌韓に『なる』のか」について、社会心理学が蓄積してきた偏見についての研究や社会文化的要因から解き明かす。
本記事で指摘される興味深い事実の1つは、日本人の「韓国人観」の変遷だ。1941年に元大阪学芸大学の心理学者・原谷達夫氏らが日本の小学生~大学生を対象に12の人種・民族集団について持つ信念や態度を調査したところ、朝鮮人への好感度は日本人、ドイツ人、イタリア人に次いで4番目に高かった。嫌韓どころか、「好韓」だった時代があったのだ。(※ただし、当時既に第二次大戦が始まっている中での「敵」もしくはそれに準ずると見なされる民族・国民と比べた相対評価であり、独立した同盟勢力であるドイツ人やイタリア人よりは低い評価であったし、日本人と対等に扱われていたわけでもないことも荻上氏・高氏は指摘している)
※記載に不十分なところがあったため、加筆しました。(2019年10月10日14時00分)
それが、敗戦直後の1946年には最下位である12位に落ちる。その後、2000年代には韓国に対する態度は比較的ポジティブだったのが、2012年には急激に悪化した。(内閣府「韓国に対する親近感」調査)
荻上氏と高氏は、あるタイミングで嫌韓に「なる」背景に社会文化的要因を指摘しつつ、「誰が偏見を持つのか」について社会心理学の偏見研究を紹介していく。2人は、「嫌韓」を理解するためのキーワードとして「現実的集団葛藤理論」「集団的ナルシシズム」「セレクティブエネミー」「集団間接触理論」を挙げ、こう書いた。
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