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コラム
ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
NYタイムズがウィキリークス連載を「突然中止」は誤報?
昨日発売の本誌12月15日号は、ニューヨーク・タイムズがウィキリークス関連の報道で米政府の「助っ人」の役割を果たし、「メディアとしての責任と独立性を放棄した」と報じたばかり(「報道の自由を捨て去ったNYタイムズの失態」)。そんななか今度は読売が、ニューヨーク・タイムズが外交公電についての連載記事を突然「中止した」と報じた。
「突然中止」の理由について、読売はニューヨーク・タイムズが「米政府などの意向に応じた可能性を示唆した」と書いた。ニューヨーク・タイムズの連載が「8日付けは停止」と報じた日経は、「紙面で理由は明らかにしていないが、(ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジの)逮捕を受け自主的に規制したもようだ」と推測している。
つまり、ニューヨーク・タイムズがとうとう政府の圧力に屈して「ウィキリークス報道を自粛」――そういうニュアンスだ。このニュースに「ニューヨーク・タイムズも落ちるところまで落ちたな」と思いながらも、「まさかそこまで?」とにわかには信じられず、ことの次第を調べてみた。
どうやら、「突然中止」とも言えなそうだ。
ニューヨーク・タイムズ電子版は、ウィキリークスが入手した外交公電に関する報道を開始した11月28日の翌日の29日に、「連載記事は9日間続く」と宣言していた。
11月29日付けニューヨーク・タイムズ電子版から引用:
In addition to a nine-day series of articles on the trove of documents, The Times plans to publish on its Web site the text of about 100 of the cables -- some edited and some in full -- that illuminate aspects of United States foreign policy.
12月7日付けの同紙電子版のブログには、「ニューヨーク・タイムズの9日間に渡る外交公電についての連載は、月曜(12月6日)夜に終了した」と書かれている。
12月7日付けニューヨーク・タイムズ電子版のブログから引用:
The final installment in a 9-day New York Times series on the cables concluded on Monday night, but documents continue to be published by WikiLeaks and other news organizations.
電子版での連載を開始した11月28日から12月6日までを数えると、ちょうど9日間だ(紙面での連載は29日から7日まで)。つまり、ニューヨーク・タイムズは「突然」ではなく、「予定どおり」連載を終了したのではないか。
たしかに、連載終了はアサンジ逮捕の直後というタイミング。しかも、12月7日付けのブログには、この日にジョセフ・リーバーマン上院議員がウィキリークスだけではなくニューヨーク・タイムズについても、諜報法に違反した容疑で調査すべきだと息巻いたという報道がある(これはこれで、特筆すべきニュースだが)。同紙に米政府から圧力がかかったことは事実だろう。だが、ニューヨーク・タイムズが「政府の圧力に屈して連載を突然中止した」という推測は、行き過ぎだったと言えそうだ。
注:ニューヨーク・タイムズ電子版の該当記事へのリンクを張ると、ログインサイトが表示されるため、該当記事のタイトルを表記することにします。検索してみてください。
■11月29日付けニューヨーク・タイムズ電子版:"Answers to Readers' Questions About State's Secrets" 2パラグラフ目
■12月7日付けニューヨーク・タイムズ電子版:"Updates on Leak of U.S. Cables, Day 10" 冒頭
――編集部・小暮聡子
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