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ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
「一兵卒」小沢一郎の終わり
民主党代表選が終わった。結果は事前の日本メディアの票読み通り。選挙で敗れた後、小沢前幹事長は「一兵卒として民主党政権を成功させるために頑張っていきたい」とあいさつしたらしい。「しばらくは兵を引く、という宣言」と評した全国紙もあるが、むしろ逆だろう。「一兵卒」とはいえ、兵だから銃を持っている。つまりはまだまだ戦う、という意思表示だと見ていい。
しぶとい人だ。「指導力がない」とか「経済無策」とか、かなりボロクソに言われても(少なくとも見かけは)馬耳東風の菅首相もそうとう図太い方だが、政治とカネの問題で叩かれまくり、同日発売の週刊誌2誌に「女性」問題を書き立てられ、そして一世一代の選挙で大敗してなお政治をあきらめていないとすれば、小沢氏には「諦念」という感情が欠如しているとしか思えない。
ただ本人がいくら諦めていないといっても、今回の代表選の結果を見れば小沢氏が今後復活する目がほとんどないことがすぐ分かる。選挙のカギを握るとみられていた党員・サポーター票で小沢氏は51ポイントしか取れなかった。菅氏の249ポイントのわずか5分の1である。
「得票数の生データだと接近している」という反論もあるかもしれない。だがそれぞれの得票数は小沢氏9万194人、菅氏13万7998人で、菅氏は小沢氏の1・5倍もあった。「1・5倍しか」ではない。「1・5倍も」だ。通常の選挙で追い風もなしに1・5倍の差をひっくり返すのがいかに難しいかは、「選挙の鬼」である小沢前幹事長自身が一番よく知っているはずだ。
党員・サポーター票はもちろん完全に一致してはいないが、ある程度世論の動向と連動していると見ていい。「世論」が小沢氏にノーを突きつけたということは、つまりは小沢首相では次の総選挙には勝てない、ということである。党員・サポーターの支持を集められない人が、一般有権者の票を取れるはずがない。地方議員票でも国会議員票でも菅氏に勝てなかったのは、つまるところ議員にとって「小沢首相」は恐怖でしかなかったのだろう。
円高の「危機的」状況から見て、世論は「小沢首相」の豪腕に期待する、という推測もあったが、結果的にそうはならなかった。救世主による閉塞感の打破を期待するなんて、まるでヒトラーと抱擁した1933年のドイツ国民みたいだと思っていたが、まだ日本人には「自分たちで何とかしよう」という健全さが残っているのかもしれない。
47歳で自民党幹事長を務めた小沢氏も今年68歳。本人はまだ意気軒昂なのかもしれないが、古稀まであと2年という高齢で、これまで20年かかってできなかった国民の支持を集めるという「難行」が実現できるとは思えない。
ちなみに1987年、愛弟子だった小沢氏らによる経世会の旗揚げによって事実上政治生命を絶たれたとき、田中角栄は69歳だった。
――編集部・長岡義博
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