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コラム
ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
谷垣禎一の民主党っぽさ
ねじれ臨時国会が30日に始まる。民主党の大敗による参院の与野党勢力逆転で生まれた現在の政治情勢は、政権交代を旗印に93年の総選挙で連立7党が自民党を権力の座から引きずり下ろしたが、まもなく与党内で内紛が起き、自民党が社会党とさきがけを「村山首相」という寝技で取り込んで政権を奪還した――という94年の自社さ連立政権ができたときになんとなく似ている。
自民党がもう一度「寝技」を見せてくれるのかどうかを見極めたくて、東京・有楽町の日本外国人特派員協会で27日に開かれた谷垣禎一総裁の記者会見に出た。前日のテレビ出演で大連立を完全否定した谷垣総裁は、この日も民主党との連立はあくまで否定した。だが言葉の端々に「秋波」がのぞいていた(ように感じられた)。
ⓒNagaoka Yoshihiro
昨年谷垣氏が自民党総裁に選ばれたのは、谷垣氏が自民党のなかで一番民主党っぽい、言い換えれば自民党っぽくないからだ。個別の思想や政策のことではない。あくまでイメージの話である。いわば総選挙で大敗した自民党は大勝ちした民主党を「擬態」したわけだが、自民党が93年に政権を失ったあと河野洋平氏を総裁に選んだのも多分「擬態」だった。
ただ93、94年当時の自民党には野中広務氏ら寝業師がまだわんさかいた。たとえ河野氏をトップに頂いて「リベラル」「ハト派」のイメージを全面に押し出していても、政権与党として半世紀の間培った凄みや執念のようなものはしっかり残っていて、それが結果的に政権奪還につながった。
谷垣自民党にその「凄み」はあるだろうか。「公募や予備選で選ばれた若い候補者が参院選でがんばった。オープンな手法で衆院選の全300小選挙区に候補者をそろえたい」「民主党は現実には(官僚の)天下りを横行させている。もう少し厳格にやる必要がある」という谷垣総裁の言葉を聞くと、まるで民主党だ。もちろんどちらも悪いことではないのだが、どうにも「自民党らしさ」が見えない。
法曹でもある谷垣総裁は頭脳明晰、恐らく人柄もかなりいいのだろう。だがそれが一国のトップとして本当に必要な条件なのか。「美徳であっても破滅に通じることがあり、逆に悪徳であっても安全と繁栄がもたらされることがしばしばある」と、マキャベリは『君主論』で説いている。
最近の日本の首相で最もマキャベリ的なのは小泉純一郎氏だと思うが、谷垣総裁と菅首相を比べると、ずうずうしい分だけ菅首相の方がよっぽどマキャベリ的に見える。
――編集部・長岡義博
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