コラム

世界展開する中国の「警備会社」はガードマンか、傭兵か──各国の懸念材料とは

2023年10月27日(金)13時25分

中国の警備会社が中国企業以外に顧客をほとんど獲得していないことには、いくつかの理由が考えられる。

第一に、中国の警備会社はロシアや欧米の同業他社に比べて実績が乏しく、火器を携行しないので活動にも限界がある。そのため、幅広いニーズに応えられない。

第二に、言語の問題だ。外国で軍事活動にもなりかねないデリケートな任務をこなすなら、顧客や現地治安機関との密なコミュニケーションが必要になる。しかし、人民解放軍出身者で外国語が堪能な者は多くない。

そして最後に、そもそも中国政府の目的が「中国の利益を守ること」にあることだ。そのため、中国企業の防衛以外の目的のために警備会社を用いる動きは、これまでのところほとんどない。

各国の懸念材料とは

だとすれば、ほとんどの国にとって直接的な脅威ではないようにも映る。

しかし、中国の警備会社にはいくつかの懸念も指摘されている。

第一に、中国の警備会社が武装することは稀だが、現地の法人や組織に訓練、兵器などを提供し、実働部隊として利用することは珍しくない。

激しい内戦が続いた南スーダンでは2016年、民兵の襲撃で石油施設から動けなくなった中国人労働者300人以上を北京德威が救出した。その際、北京德威は石油施設を襲撃した民兵と対立する民兵と契約し、中国人労働者の救出に当たらせた。

南スーダン内戦では政府系、反政府系を問わず、民兵による非人道的行為が数多く報告された。自国民の安全のためとはいえ、こうした勢力にテコ入れすることは、地域の不安定化を促しかねない。

第二に、中国企業による不正行為の隠蔽にもなりかねないことだ。

海外展開する中国企業が直面するリスクには、イスラーム過激派によるテロなどだけでなく、中国企業が自ら招く現地の敵意もある。

アフリカなどでは中国企業に雇用された現地人が、中国人経営者を襲撃したり、暴動を起こしたりすることさえある。その多くは、給与未払いなどブラック企業的な待遇への不満が引き金になっていた。ザンビアでは2012年、労働環境をめぐる対立の果てに鉱山労働者が中国人マネージャーを殺害した。

中国の警備会社は現地警察が対応してきたこういった事案の対策もカバーするとみられる。それは中国企業の不公正を、下請けの現地法人・組織とともに封殺することにもなり得る。

中国政府はこれまで「中国の利益は各国の利益」と主張し、通商がお互いの利益になると強調して、途上国の支持を取りつける一助にしてきた。

「中国企業が途上国に不利益しかもたらさない」とまではいえないが、その一方で中国政府がいうほどウィン・ウィンの関係が成立しているかも疑問だ。中国の警備会社による活動は、この疑問を大きくする一端ともいえるだろう。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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