コラム

ウクライナ「義勇兵」を各国がスルーする理由──「自国民の安全」だけか?

2022年03月07日(月)20時40分

極右の「独立国」

・クリミア危機後、アゾフなど民兵はウクライナ国防軍に編入された。

・ところが、国防軍の一部となりながら、アゾフはナチスを賞賛する一方、人員のリクルートや訓練を独自に行なってきた。

・資金面でも、アゾフには仮想通貨などを用いた海外の白人至上主義者などからの献金が集まってきた。

・歴代のウクライナ政府は、ドンバスの分離主義者やロシアに対抗する必要から、アゾフの問題行動(後述)をほぼ黙認してきた。

・2020年に本部を訪問したアメリカのジャーナリストに対して、アゾフの広報責任者は「ここは国家のなかの小さな国家のようなものだ」と説明している。

ウクライナに集う差別主義者

・祖国防衛を掲げるアゾフなどウクライナ極右は、「ウクライナらしくないもの」を排除するため、LGBTやロマ(ジプシー)を迫害してきた。

・アゾフは「プーチンはユダヤ人だ」といった人種差別的なヘイトメッセージや陰謀論をSNSで拡散し、欧米の白人極右を惹きつけてきた。

・2019年2月にNZクライストチャーチでモスクを銃撃し、51人を殺害したブレントン・タラントも、事件前にウクライナ行きを希望していた。

・イギリスやカナダで「テロ組織」に指定されているアトムワーヘン分隊のメンバーもアゾフで訓練を受けている。

・ウクライナで活動する外国人は、2020年までに1万7,000人にのぼると推計された。

・なかにはシリアからウクライナへと戦場を渡り歩く、職業的傭兵と化した者もいる。

ウクライナ侵攻で高まる社会的認知

・アゾフはアメリカ国務省から「ナショナリストのヘイトグループ」と呼ばれ、Facebookなども「危険な組織」としてその投稿を規制してきた。

・ウクライナの現在のゼレンスキー政権は基本的に中道系で差別的ではないが、ドンバスの分離主義者やロシアに対抗する必要から、アゾフなど極右の活動を取り締まれなかった。

・これと並行して、欧米はアゾフに目立たないように軍事訓練を提供してきた。

・ロシアによるウクライナ侵攻が始まると、アゾフは国防軍の一部としてこれに対抗する一方、未成年や高齢者を含む民間人の訓練を行ない、総力戦を推し進める主体となっている。

・現在ウクライナには各国から義援金が寄せられているが、これに混じってアゾフもクラウドファンディングなどで募金を募っている。

義勇兵か、外国人戦闘員か、傭兵か

「義勇兵」というとロマンティックな響きがあるかもしれないが、「外国人戦闘員」と呼びかえることもできる。

なんと呼ぶにしても、外国人が自発的に集まった事例には、古典的なものとしては1936年からのスペイン内戦があり、最近のものでは2014年からのシリア内戦がある。そして、これらに集まった外国人の多くは、自分の国の現状に不満を抱いていた点で共通する。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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