コラム

「世界最大のごみ捨て場」中国の終焉──日本のプラスチックごみはどこへいく

2018年07月26日(木)13時30分

国別でみると、大陸向けのプラごみは日本からのものが最も多いとみられ、それにアメリカ、タイ、ドイツが続く。また、香港向けのものはアメリカ、日本、ドイツ、イギリスが目立つ。

「もうごみは受け入れない」

1980年代以来、中国は世界各国から廃棄物を輸入してきた。それによって利益を得る業者がいるだけでなく、金属類などを工業製品の原料として再利用することも「ごみ輸入」の大きな目的だった。

しかし、近年では中国国内でもごみが急増しており、大気、水質、土壌の汚染の一因と考えられるようになった。

これに拍車をかけたのが「ごみ輸出国」の増加だ。近年では、経済成長にともない、近隣の東南アジア諸国からもごみ輸出が急増。例えば、インドネシアは年間129万トンのプラごみを生んでいる。

念のために補足すれば、中国は純粋な「ごみ輸入国」ではない。香港に1年間に輸入されるプラごみは288万トンだが、輸出されるものは282万トンに及ぶ。つまり、世界的なごみ流通網のなかで、香港は世界でも指折りの中継地になっている。

とはいえ、その一方で、「世界のごみ捨て場」としての中国のキャパシティが限界に近づいていることも確かだ。

その結果、2017年に中国政府はプラスチックを含む24種類のごみの受け入れを年内一杯で禁止すると発表。2018年4月には、さらに16種類のごみの受け入れを2019年末までで禁止する方針を打ち出した。このなかには鉱さい(鉱石から金属を製錬する際に分離する鉱物成分、スラグ)やポリエチレンなども含まれる。

ごみ輸出国への衝撃

「世界のごみ捨て場」をやめるという中国の方針を、国連環境計画(UNEP)は「我々が汚染を打ち負かすのを手助けする」と評価している。その一方で、中国の決定はごみ輸出国に動揺をもたらした。

ごみの取り引きも一応「貿易」のカテゴリーに入るが、中国政府による輸入禁止は世界貿易機関(WTO)の手続きに沿ったもので、違法性もない。そのため、外国が中国政府の決定を覆すことは不可能だ。まして、さすがにどの国も「今まで通りごみを引き受けろ」とは言えない。

そのため、中国に代わる「世界のごみ捨て場」として、ヴェトナム、タイ、マレーシアなどのごみ処理場が活況を呈している。

しかし、先述のように、東南アジアの多くの国自身が、中国にごみを輸出してきた。そのうえ、これらの国は中国よりはるかに面積が狭い。したがって、これらの国のごみ処理場が遅かれ早かれ一杯になることは、容易に想像できる。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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