静かに広がる「右翼テロ」の脅威―イスラーム過激派と何が違うか
ただし、そのなかでも欧米諸国は、この点でさすがにというべきか、メディアや研究機関を中心に、「内輪の恥」をも明らかにする自浄作用が働きやすいといえます。これまでとりあげてきた米国インベスティゲイティヴ・ファンドの調査や、英国警察の元責任者の発言、ドイツでのシンポジウムなどは、これを示します。
反移民・難民感情が広がるなか、これらの自浄作用がどこまで機能するかは、その国で自由と法の支配がどの程度確立されているかの目安になってくるでしょう。
日本にとっての試金石
その意味で、日本も決して無縁ではありません。
例えば、日本の警察庁の統計では「外国人による犯罪のデータ」は明示されていますが、「外国人が被害者である犯罪のデータ」は示されていません。そこには「外から来る連中は警戒すべきだが、日本人が外国人に危害を加えることはない」という思い込みがあるようにみえますが、それこそドイツのシンポジウムでビニンガー議員が述べた「因習的な発想」ではないでしょうか。
戦後の日本でも、オウム真理教による一連の事件や、革マル派など左翼過激派によるテロだけでなく、右翼によるテロもありました。自民党の金丸信議員への銃撃(1992)、民主党の石井紘基議員の刺殺(2002)、そして2月23日に発生した朝鮮総連本部への銃撃などは、その代表です。
このうち、特に総連本部銃撃事件に関しては、いかに外交レベルで北朝鮮と対立しているとしても、テロ行為を容認してはいけないはずですが、そこに対する批判は必ずしも多くありません。ここに、移民やムスリムへの反感を背景に欧米諸国で白人右翼テロが静かに広がったのと同じ社会状況を見出すことができます。
しかし、先述のように、少なくとも欧米諸国では自浄作用もみられます。したがって、右翼テロへの対応は、日本が自由と法の支配を重視する国として一人前なのか否かの試金石になるといえるでしょう。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
「核兵器を使えばガザ戦争はすぐ終わる」は正しいか? 大戦末期の日本とガザが違う4つの理由 2024.08.15
パリ五輪と米大統領選の影で「ウ中接近」が進む理由 2024.07.30
フランス発ユーロ危機はあるか──右翼と左翼の間で沈没する「エリート大統領」マクロン 2024.07.10