緊縮策という病から解き放たれつつある米国経済
拡張的な財政政策を行う姿勢が強まっているバイデン政権 REUTERS/Carlos Barria
<アメリカが緊縮的な経済政策を基本に据える政策思想から開放される、歴史的な転換点を迎えつつある>
米国の株式市場は、セルインメイ(SELL IN MAY)が警戒された5月も最高値近辺を維持して推移した。インフレ率上昇やビットコインの急落などで市場心理が揺らぐ場面はあったが、ワクチン接種とともに経済成長率が上振れるとの根強い期待が、一部のバリュエーション指標で見れば割高の領域とも言える米国株市場を支え続けているとみられる。
政治的には、バイデン政権が、4月までに急ピッチのワクチン接種を実現させたことで、新型コロナの患者数は順調に低下した。それが経済活動再開の動きを後押しして、世の中の雰囲気を明るくしたことが大きく、米国民の政権に対する評価は総じて悪くない。4月にいわゆるハネムーン期間を過ぎたが、「コロナからの回復」という成果のおかげで、バイデン政権の政治基盤は強まった可能性がある。
第2、3弾の財政プランの意味
4月21日の当コラムでは、バイデン政権による第2弾の財政プランの米国雇用計画を説明したが、ここで述べたように更に第3弾となる米国家族計画をバイデン大統領は相次いで発表した。今後、これらの財政プランが議会で議論されるが、秋口までにはこれらの政策が多少修正された上で、民主党議員の賛成多数によって成立すると筆者は予想している。
第2、3弾の財政プランは、今後10年を見据えた長期に及ぶ所得分配政策が軸になっており、来年までの経済成長率に大きな影響を及ぼす可能性は低い。つまり、第1弾の財政プランである3月に成立した米国救済計画が、経済成長率を押し上げる政策であるのとは、大きく性格が異なる。
ただ、米国雇用計画などには増税がメニューに入っているので、仮に増税が短期間に実現して緊縮財政に転じれば、経済成長や株式市場に影響するリスクがある。実際には、米国雇用計画では、増税による財源確保が計画されている一方で、非常に長期間にわたって増税が実現されるスケジュールが示されている。この意味で、所得分配を実現しつつも、経済成長を重視しながら財政政策を積極的に使うという、バイデン政権の方針は一貫しているとみられる。
10月から始まる22会計年度の予算教書の意味
そして5月28日には、2021年10月から始まる22会計年度の予算教書をバイデン政権は発表した。これまで発表している米国雇用計画などを踏まえて、2022年度には6兆ドルの歳出計画が示されており、この歳出規模はコロナ禍前の2019年度よりも3割以上増えた水準である。
そして、10年後までの大まかな財政見通しについても、歳出拡大が優先される一方で緩やかな増税が想定され、財政赤字は2030年度まで約1.5兆ドル(GDP対比約7%)で推移する想定が示された。財政赤字がGDP対比約20%近くまで膨らんでいる現時点からは、経済成長による税収増を主因に財政赤字は大きく減る。
ただ、2023年度以降も財政赤字を緩やかに拡大させる政策運営で、今後10年にわたり大幅な財政赤字が続くことをバイデン政権の予算教書は明確に示している。多くの場合、政府による長期の財政収支見通しでは、財政赤字は緩やかに縮小するとされるが、バイデン政権の財政政策は従来の姿勢からかなり距離があると言える。
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