生肉を食べているペットの糞から耐性菌を検出...... mgstudyo-iStock
<ペットの毛並みがよくなると評判だが、人間の衛生面にはリスクが生じるようだ>
ペットの犬に生肉を与えることが人気となっている。毛並みのツヤがよくなるほか、ドッグフードよりも歯垢が溜まりにくく口臭予防になるなど、数々のメリットが挙げられている。祖先が肉を中心に食べてきた一部の犬種では、食いつきが目にみえてよくなることもあるようだ。
また、生肉を用いたドッグフードもトレンドとなっている。一般的なドッグフードでは加熱処理が施されているのに対し、生肉ドッグフードは生の肉や骨、内臓などをそのまま含んでいる。こちらも毛並みの向上などに効果があるとされる。
しかし、犬に生肉や生のドッグフードを与えると、衛生上の問題を生じることがあるようだ。英ブリストル大学の研究により、生肉を食べているペットの犬は、一定の割合で糞として抗生物質の効かない大腸菌を排出していることが判明した。一緒に暮らしている人間に感染する危険性があるという。
研究を行ったのは、英ブリストル大学・細胞分子医学部のジョーダン・シーレイ博士たちのグループだ。結果をまとめた論文が7月20日、医学誌『ジャーナル・オブ・アンチマイクロバイタル・ケモセラピー』に掲載された。同チームは6月、『ワン・ヘルス』でも同様の研究論文を発表している。
これら2つの研究では、合計823頭の犬とその飼い主について、食生活などライフスタイルをアンケート調査した。同時にペットの糞のサンプルを回収し、抗生物質に耐性をもつ大腸菌の有無などを調べている。結果、生肉を食べさせている犬の場合、糞のなかに抗生物質耐性をもつ大腸菌が含まれている割合が大きいことが判明した。
異なる犬のグループを対象とした2つの研究で同じ傾向が確認されており、犬の年齢や生肉を食べている期間にかかわらず同様の結果が出たという。
ブリストル大学が発表したプレスリリースによると、研究チームは、生肉は比較的安全な食事のチョイスとはいえないと指摘しているようだ。生肉を与える場合、飼い主は糞の後始末の際などにとくに注意するよう呼びかけている。
研究のなかで微生物学的領域を主導したマシュー・アヴィソン博士は、こうした細菌が直ちにペットや飼い主に病気を引き起こすものではないと説明している。ただし、大腸菌は尿路感染症を引き起こすことがあるほか、身体のその他の部分に感染した場合には敗血症など重大な疾患を引き起こすこともあり得るという。敗血症は悪化すると、指や四肢の切断を迫られるおそれがある。
大腸菌に限らず、抗生物質耐性菌の拡大は近年問題となっている。米ワシントン大学などの研究チームは今年1月、2019年の世界の死亡事由において、抗生物質耐性菌によるものと推定される割合が第3位の規模を占めていたとする論文を発表している。脳卒中・心疾患に次ぐ主な死亡要因となった。