ペット

犬に生肉や生肉ドッグフードは危険...抗生物質耐性の大腸菌が繁殖 英研究

2022年8月4日(木)15時30分
青葉やまと

生肉を食べているペットの糞から耐性菌を検出...... mgstudyo-iStock

<ペットの毛並みがよくなると評判だが、人間の衛生面にはリスクが生じるようだ>

ペットの犬に生肉を与えることが人気となっている。毛並みのツヤがよくなるほか、ドッグフードよりも歯垢が溜まりにくく口臭予防になるなど、数々のメリットが挙げられている。祖先が肉を中心に食べてきた一部の犬種では、食いつきが目にみえてよくなることもあるようだ。

また、生肉を用いたドッグフードもトレンドとなっている。一般的なドッグフードでは加熱処理が施されているのに対し、生肉ドッグフードは生の肉や骨、内臓などをそのまま含んでいる。こちらも毛並みの向上などに効果があるとされる。

しかし、犬に生肉や生のドッグフードを与えると、衛生上の問題を生じることがあるようだ。英ブリストル大学の研究により、生肉を食べているペットの犬は、一定の割合で糞として抗生物質の効かない大腸菌を排出していることが判明した。一緒に暮らしている人間に感染する危険性があるという。

生肉を食べているペットの糞から耐性菌を検出

研究を行ったのは、英ブリストル大学・細胞分子医学部のジョーダン・シーレイ博士たちのグループだ。結果をまとめた論文が7月20日、医学誌『ジャーナル・オブ・アンチマイクロバイタル・ケモセラピー』に掲載された。同チームは6月、『ワン・ヘルス』でも同様の研究論文を発表している。

これら2つの研究では、合計823頭の犬とその飼い主について、食生活などライフスタイルをアンケート調査した。同時にペットの糞のサンプルを回収し、抗生物質に耐性をもつ大腸菌の有無などを調べている。結果、生肉を食べさせている犬の場合、糞のなかに抗生物質耐性をもつ大腸菌が含まれている割合が大きいことが判明した。

異なる犬のグループを対象とした2つの研究で同じ傾向が確認されており、犬の年齢や生肉を食べている期間にかかわらず同様の結果が出たという。

研究者たちは生肉を与えることを推奨していない

ブリストル大学が発表したプレスリリースによると、研究チームは、生肉は比較的安全な食事のチョイスとはいえないと指摘しているようだ。生肉を与える場合、飼い主は糞の後始末の際などにとくに注意するよう呼びかけている。

研究のなかで微生物学的領域を主導したマシュー・アヴィソン博士は、こうした細菌が直ちにペットや飼い主に病気を引き起こすものではないと説明している。ただし、大腸菌は尿路感染症を引き起こすことがあるほか、身体のその他の部分に感染した場合には敗血症など重大な疾患を引き起こすこともあり得るという。敗血症は悪化すると、指や四肢の切断を迫られるおそれがある。

大腸菌に限らず、抗生物質耐性菌の拡大は近年問題となっている。米ワシントン大学などの研究チームは今年1月、2019年の世界の死亡事由において、抗生物質耐性菌によるものと推定される割合が第3位の規模を占めていたとする論文を発表している。脳卒中・心疾患に次ぐ主な死亡要因となった。

今、あなたにオススメ

注目のキーワード

注目のキーワード
トランプ
投資

本誌紹介

特集:引きこもるアメリカ

本誌 最新号

特集:引きこもるアメリカ

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

2025年4月 8日号  4/ 1発売

MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

人気ランキング

  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
もっと見る
ABJ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。