「必要な限り」ウクライナ支援を続ける、とバイデンは言ったが Kevin Lamarque-REUTERS
<食品価格やエネルギー価格の高騰という制裁のしっぺ返しを受けて、西側のウクライナ支持にも陰りが見えはじめた>
ウクライナへの侵攻を受けて、西側諸国が発動した一連の対ロシア制裁は、ロシア経済を機能不全に陥らせ、大きな影響力を持つオリガルヒ(新興財閥)たちを孤立させ、社会に不安をもたらし、ロシア政府を揺さぶることが目的だった。
しかし今、揺さぶられているのはロシアではなく、西側諸国の方だ。
ウクライナでの戦闘と対ロ制裁は、ロシアより西側諸国にさまざまな問題をもたらしている。物価やガソリン価格は高騰し、数カ月後には冬がくるというのに暖房に欠かせない天然ガスの確保の見通しが立たない。ヨーロッパでは政治不安も生じつつあり、イギリスでは、ヨーロッパで最も熱心なウクライナ支持者の一人だったボリス・ジョンソン首相が辞意を表明。イタリアでは、政権内の混乱から、マリオ・ドラギ首相が辞意を表明した。
一連の問題からは、ウクライナに対する世論の支持がいつまでもつだろうかという疑問が浮上する。EUの政策執行機関である欧州委員会によれば、ロシアは依然として、EUにとって原油、天然ガスと石炭の主要な輸入先だからだ。
米ジャーマン・マーシャル財団の客員上席研究員であるブルース・ストークスは、「誰に話を聞いても、みな今後数カ月の見通しを警戒している」と述べた。「高いエネルギー価格、インフレや経済の先行き、ロシアに対する強硬姿勢に世論の支持が続くのかどうかを注視している」
ウクライナでの戦闘と厳しい対ロ制裁がもたらした混乱は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に有利に働いている。
元米国務副長官で現CIA長官のウィリアム・バーンズは、アトランティック誌のインタビューに対して、「ある程度の混乱は、プーチンにとって都合がいい」と指摘した。
バーンズは、国内で不安感が高まり、市民が民主国家の諸制度への信頼を失うと、ロシアのような権威主義国家を利することになるという。「西側諸国の混乱や分裂が深まるほど、プーチンは余裕を感じ、ロシアの侵略に対する西側諸国の抵抗の効果が弱まる可能性が高い」
2月24日にロシアがウクライナ侵攻を開始して以降、西側諸国はロシア政府を罰するためのさまざまな制裁を導入してきた。海外にあるロシア資産の凍結や、ロシア産原油の輸入制限、国際送金・決済システム「SWIFT」からロシアの大手銀行を排除するなどの制裁だ。